'26/8/6 〜 8/21 荒井良展「MELTDOWN」

荒井良展「MELTDOWN」
202686 (木)〜 821 (金)

平日 12:00~19:00(最終入場18:30)

土日祝・最終日 12:00~17:00(最終入場16:30)

会期中無休 / 展示室B

入場料 当日券1,000 (画廊受付にて当日券販売)

展示室A サド・オマージュ -defy- 展も同時にご覧いただけます。

ヴァニラ画廊では、荒井良展「MELTDOWN」を開催いたします。
本展では、荒井良がMELTDOWNというコンセプトの元、新たに制作いたしました平面作品及び、過去の立体作品の展示を同時に行います。


原子炉の炉心部をテーマにした作品を作るようになったきっかけは中学生時代のある一枚の写真との出会いによるものだった。

その写真にはうす暗い水中から青白い光を受けて浮かび上がる幾何学的な形のものが写し出されており、説明書きには「チェレンコフ光―粒子が媒体の中をその媒体内の光速度より速く走ると、衝撃波に似た機構で独特のチェレンコフ光が放出される」とあった。写真は原子炉の内部を撮影したものだったのである。当然のことながら中学生の頭に説明の意味など理解できる筈もなかったが、映像を通して視覚から受ける影響は文字を越えた力を持っていたようで、この分野に対しての独特のイメージが頭の中に刻み込まれてしまったような気がしているのである。

そのころの日本は核というテーマに対しての考え方が区々で大国の核実験による深刻な汚染被害を受けながらも一方では平和利用という名目の元に明るい未来を声高に提唱したり、期待と不安、親近感と畏れが混然一体となっていた時代だった。しかし身のまわりのことを考えると国民の視線はむしろ冷やかで直接生活に影響を及ぼすような問題でない限り、首をつっこまない、深く考えないといった風潮の方が強かった。自分自身もSFの題材の要素の一つぐらいにしか認識していなかったし、事実テレビや映画に登場するモンスターや巨大生物を生み出す“諸悪の根源”は大抵放射能だった。雨に濡れれば頭の毛が抜けると言われ、テレビのブラウン管からは放射線が出ているという話まであったが、特に具体的な被害を被ったというわけでもなく、やはり危機感は薄かったように記憶している。

そんな中で出会ったこの写真は参考映像として百科事典の中に載せられていたもので特にインパクトがあるというわけのものではなかったが、実際の眼に映った青白い光の映像には空想の世界や世間の噂話にはない不安と妄想をかきたてるだけの説得力があったのだと思う。

たった一枚の写真から受けた印象が“作品”という形になるまでに多くの時間を費やさなければならなかった事は言うまでもないが、その間イメージの方は予想以上に膨れあがり、モチーフである被写体から離れて一人歩きを始めてしまったのである。それは単に長い時間がもたらした結果というだけではなくテーマとなった対象そのものが持つ性質であったり、あるいはそれをとりまく社会(大げさに言えば日本民族)の反応が影響しているのではないかと思う。試作を繰り返す作業を通して被写体と向き合っているうちに、昔から日本人が抱いてきた禁忌に対する情動に似たようなものを感じてしまうのである。そう考えると何層にも覆われ人を寄せつけない密閉された炉心の構造は、得体の知れない古代の神を祀った「ほこら」のようにも見えてくる。最先端の技術と因習とが頭の中で混ざり合いまるで気温差によって次々と発生する雷雲のように妄想が湧き出てくるのである。

「祀られているもの」が現実に我々にもたらすものは果てしない恩恵か、禍か―
現代人が造り上げた「ほこら」にはいったい何が宿るのだろうか。

(荒井良)

荒井良 平面作品
荒井良 平面作品
荒井良 平面作品
荒井良 平面作品

荒井良プロフィール

1958年 東京都出身
文化学院美術科・武蔵野美術学園彫塑科卒業

1970年代より張子素材による「妖怪」を中心とした立体造形の制作をはじめる。
同時に同じ素材による「原子炉」をモチーフとしたシリーズ「MELTDOWN」を制作するが、新たに平面(ドローイング)の分野にも範囲を広げている。