2013年4月アーカイブ

'13/4/15 〜 4/27  森茉莉生誕110年記念「甘い蜜の部屋」

入場料 500円

「藻羅という女には不思議な、心の中の部屋がある。」           

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http://www.vanilla-gallery.com/archives/2013/20130415.html

 

  独特で特異な世界観を持つ作家・森茉莉が生誕し2013年で110年を迎えます。女史が還暦を過ぎてから、物があふれるベッドの中で10年がかりで書いた一大小説「甘い蜜の部屋」。この官能的ロマネスクをテーマにした展覧会です。文学史に残る悪魔的ニンフェット牟礼藻羅。この主人公を中心に、ぜいたくな魂や、無限に搾取される暴力的で官能的な愛、モイラの魔的魅力を持って展開する小説は、色褪せることなく人々の心を捉え続けております。本展示では、モイラへ捧ぐ作品を通して、薔薇色のモイラの魔のオーラを醸し、精神的・肉体的に心を貪る「甘い蜜の部屋」 をヴァニラ画廊内に展開致します。           

(出品作家) アルフォンス井上・雲母りほ・真珠子・須川まきこ たま・内藤ルネ・林由紀子・町田ひらく・宮西計三 山下昇平・山田緑・山本六三(50音順)

各作家が織りなす「甘い蜜の部屋」まさに森茉莉の言葉の一つ一つのように滴るような美しさの作品が揃いました。
ヴァニラ画廊内に展開される蜜の部屋を是非ご堪能ください。

 

 

「それでも生きる少女のために」と丁寧に編まれた、心揺さぶるジンのお取り扱いを始めるにあたり、制作された桐島さんの思いを記しました。

是非書籍と一緒にお楽しみください。

 

桐島こより編:インディペンデントマガジン

『MILLE-FILLES』

 

1,050円(税込)

 


ミルフィーユズ_n.jpg

町田ひらく・岡崎裕美子・宗像郁・マキサヲリ・桐島こより

 

いつもーー

いつも一人の女の子のことをーー

 

夕方の下校放送の割れた音に雑ざりこんな声が頭の中に鳴り響くようになったのはいつからだったのだろうか。

そして、今日もパレードはやってこなかった、とやるせなく肩を落とすのだ。

 

否、呆れ返るほどパレードはやってきた。

イミテーションの冠を見せびらかして失笑を買うような、地金はいいのに悪趣味なデコレーションを山のように施しパレード中にぼとぼとパーツを落としていくような。

みすぼらしさを強調する従者を引き連れ斜に構えながらも玉座を欲して止まないパレードが悪夢のように続き、その座・イメージ・ステータスを貶め続けているのをどこまでも続くアスファルトの上に立ち、ずっと見ていて疲れ果てていた。

 

しかし、悪夢は予告なく終わった。

ある日突然アスファルトが割れた。建物が倒壊した。線路が波打った。それら全てを海が根こそぎさらっていった。

やがて、アスファルトの下に埋もれていた土や川や草がひょっこり顔をのぞかせた。

人々は未知のものである荒野を恐れた。私はこれを知っていた。今までひとりぼっちで誰とも分かち合えず心の奥底にしまいこんでいた風景が突如として目の前に出現し、それにやっと実在するものとして触れることができ、皆と分かち合うことができ、少しだけ身軽になった。

 

もう待つのは止めていいんだ、そう思った。だから、瓦礫の中から好きなものを拾い集めて雑草で編み込んで自分の王冠とすることにした。

パレードは待つものではなかった。自分が先頭を歩いてもよいものだった。例え誰も付いてこなくとも歩かなきゃと決めた。

 

そ れまで堂々と日の当たる場所で馴れ合いながらネイルやメイクやファッションを見せびらかし互いを牽制し合っていたイミテーションの集団がすっかり怯え、パ ニックを起こしている間に、私は膨大な瓦礫の山を必死に見つめ、顔や爪と指の間を泥まみれにして大事なものを拾い集めた。瓦礫の山は宝の山であり、記憶の 山でもあった。

 

 

『MILLE-FILLES』はそんな「私たち」の記録であり王冠です。

ーーいつも一人の女の子のことを書こうと思っている*ーー

この声を大切に受け継いで歩き続けていくための道標、灯台を作ろうと思いました。

幾千もの大地の裂け目を貫く光となり、不安定な足場に佇む幼い人々や、いつまでも「少女」の気高さと繊細さを忘れられずに生きざるを得ない人々の心に届きますように、との祈りを込めて。

誰もが心に秘めている王冠を、この本を片手に探してもらえたらと願っています。

 

*岡崎京子『ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね』収録「ノート(ある日の)」より

http://www.amazon.co.jp/dp/4582832121/