生と死の胎動ー「死と未来 - la mort et le futur」に寄せて

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今、社会は漫然とした閉塞感に包まれている。絵空事の様な夢や希望は最早描けないことは勿論、その先にあった筈の絶望と虚無さえ、どこか想定の範囲内のものに過ぎない。あらかじめ作られた、希望と絶望の絵空事。そんな世界の中にあって、今や我々は、絶望にさえ既視感を覚える始末という訳である。

 

 

 このどんよりと濁ってぬかるむ社会に、風穴を開ける展覧会が、現在ヴァニラ画廊にて開催されている。

 

この展示は、現代日本において、「最もエッジな表現領域へと踏み込む」展覧会である、とキュレーションを務めるケロッピー前田氏は言う。

前田氏をはじめ、展示に参加するピスケン氏、釣崎清隆氏、アイカワタケシ氏らは、かつて、伝説の雑誌「BURST」を作り出した人々だ。

ファッションとしてのアンダーグラウンドではなく、言論や写真、パフォーマンス、様々な分野から、国内外の刺激的なカルチャーを紹介し続けた「BURST」が与えた衝撃の重みを、今も覚えている人は少なくないだろう。

あの時、「BURST」は確かに、真の意味でのアンダーグラウンド、秩序立った日常の地下に蠢く胎動を以て、社会を挑発していた。

その衝撃が再び、今度はギャラリーという空間を舞台にして甦る。

 

 今回の展覧会の大きな見どころの一つは、Alicia Kingによる、ベーグル・ヘッドの映像作品だろう。

 彼女はオーストラリアの作家であり、生命工学と芸術の関係性の研究によって博士号を取得している学術的な背景を持った作家でもある。

彼女の映像作品「Shifters」は、額に生理食塩水を注入して膨らませる「ベーグル・ヘッド」の様子を写したものとなっている。これは日本で発生した身体改造の方法のひとつであるが、そこにAliciaは、医学的技術と身体、文化的な自己表現のあり方についての考察をみている。

また、同じくAliciaの作品である「Fleshtopia」は、人体の細胞を培養したものを写真におさめた作品であり、生体から取り出され、培養されたそのオブジェは、人工と自然の、また死者と生者の狭間にあるものとしての、人体のより拡張された表現性の模索にもつながっている。

 

他にも、前田氏による「トレパネーション」に関する写真やその器具、実際に人を斬った刀を写真におさめたエリック・ボシック氏の写真作品、先の大震災に取材した釣崎清隆氏の写真作品など、いずれの展示作品も、「死」と「生」の姿を根本から剥き出しにするようなエネルギーを持ったものばかりである。「エロスやフェティシズムを超える、タナトス的地獄と究極の未来感覚」と前田氏が言うように、この展示は強烈なディストピアの情景を我々の眼前に露わにすると共に、そこに生きる我々の、未来を切り開く根源的な衝動をも体感させるものなのだ。

 

アンダーグラウンドカルチャーは確かにキワモノかもしれない。だが、それはただ一時の刺激を与えて消費されてゆくカルチャーであってはならない。

地下からの鋭い一撃が、この停滞した日常にひびを入れる時、その裂け目から、何が見えるのだろうか。

 9日(土)には参加作家らによるプレゼンテーション、トークセッションも開催される。エッジな表現を極める作家達の話を聞く事ができる貴重なこの機会に、是非お越し頂きたい。

 

 (画廊スタッフ 伊藤)

 

 

 

■ケロッピー前田キュレーション「死と未来 - la mort et le futur

http://www.vanilla-gallery.com/archives/2013/20130304.html

開催中~316日(土) 入場料500

☆展覧会イベント☆

2013.3.9 Sat 17:00 - 1500yenwith 1D

PRESENTATION

土屋豊/エリック・ボシック

TALK SESSION "ディストピア・ジャパン2013"

釣崎清隆 x ピスケン x ケロッピー前田

 

※土屋豊:映画監督、『タリウム少女の毒殺日記』(20137月公開)で第25回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」作品賞受賞。

 

 

 

皆様のお越しをお待ちしております。