画家でありマンガ家、ロックミュージシャン、と様々な顔を持つ宮西計三。
3月18日の聖ヴァニラ学園「朗読劇『青髭』」では朗読のパフォーマンスを行った。宮西はライブパフォーマンス終了後のアフタートークにて個展「ペニス主義」にかける想いを語った。
聞き手:内藤巽(ヴァニラ画廊オーナー)
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内藤:あえて巷がエロスに関して色々とうるさい中、「ペニス主義」という個展名タイトルに込めた想いを教えて下さい。
宮西:我々男にとってペニスは大事なものであって(笑)、プラス面・マイナス面の両方兼ね備えた身体の一部です。肉体の付属物としてどのようにかかわっていくべきなのでしょうか。
人間が感じる快楽、恍惚…それはある一種の崇高な喜びの、SEXはその「見本」です。ペニスとは人間を人間として縛る為の道具にすぎない。その人間が縛られる道具で快楽に終始してしまうと、幻想的な喜びに出会えません。更に次なる段階に進まなくてはなりません。幻想的な喜び、霊的な喜びへと変化し、「性」は最終的に人間が人間であって人間を脱却する方法にとなるのです。
男性ならペニスがあります。個人的に言うと、ペニスを捨てること、男性であるがゆえにペニスを捨てて女性化する、境をなくしたあとに、そしてまたペニスにたち戻って、もう一度子供の頃のようにペニスをいじる(作業する)。
その男としての作業の一つに「たらしこむ」という行為があります。いかに自分の性を他者に「たらしこむ」か。たらしこみ方は関係を求めることによって違う次元の喜びを手に入れるような違う次元の喜びの入り口、それが性の概念なのではないでしょうか。私は普段の生活において、自分の性を霊的に消化している、その消化の仕方こそが自分今世紀の人間を変身させるものと思うのです。そして変わっていかなければならないと考えるのです。精神的にも肉体的にも変身していかなければならない!自分の性の力によって、形的にも内面的にもより良く変化していかなければならない、今こそセックスに対峙しないといけない!
そこで私はもう一度、セックスという概念を土台に考えました。そういう意味において、あえて一番分かりやすい看板として「ペニス主義」という言葉を用いているのです。
内藤:ペニスというもの憧れを抱く気持ちはよくわかります。男は少年の頃から皆そうですよね。
でも、今回、私に見見せてくれた絵は「ペニス主義」と打ちながらも、ただペニスをモチーフにしたり描いたりしたりする画では無く、宮西さんならではの精緻なタッチとアイディアな素晴らしいと思いました。この人はどうやってこの線かいているのかと思うほど緻密な世界です。天才ですね。宮西さんの仕事は驚きの連続です。そして顔面がペニスで形成されている婦人の絵の様に、奇妙奇天烈、宮西さんにしか書けない独特な世界。宮西さんの目の付けどころは興味深いですね。
宮西:日本人の体形が少し変わってきましたね、容姿がかなり変わりました。本来、霊的な性、例えば見詰めただけで恍惚感が得られるとでもいうのでしょうか。人と人との接触が無くても幸福が味わえる、霊の世界の恍惚感を人はひょっとして体現できるのではと私は考えていいます。その恍惚感を体現する為に歴史があり、人間は変わるための何世紀かをすごしてきていると考えることもできます。
人間がSEXに薄められた快楽、特に男女との快楽に囚われ終始するのはもったいない。そのためにも自分の性をもう一度こねくり回して、何か表現にたらしこんで、自分の身に纏う。そうすれば人は性器を出さなくてもエロティシズムを持った存在になれると思います。そういう人が増えていくと楽しいですね(笑)
◇イベントへの想い◇
(質問:画廊スタッフ伊藤)
・「呻吟」とはどのような表現手法なのでしょうか。
宮西:「呻吟とは“うめき”、うめきとは未知の感情です。
不確かな衝動に詩という方向を与え、感情に論理性、衝動に倫理性を付与する。“呻吟”はその客体化のひとつです。」
・今回のイベントは、個展のタイトルともなっている「ペニス主義」とどのような関わりがあるのでしょうか。
宮西:「絵は“線と点”です。“呻吟”が線とするならば、本田(出演者の本田龍)が打つ打楽が“点”です。そして現われる形象が音としての絵であります。」
・宮西先生にとっての絵画と音楽の表現方法としての共通点や違いを教えて下さい。
宮西:「絵は思想であって哲学でもあります。音楽は生き方として、無常な生きものとしての僕自身なのです。いや、そう在りたいと思うものなのです。思索や探求というと、“うさんくさく”嘘くさい!
もっと自然な“よろこばしい”生きかたを実践するために音楽表現が必要なのだと思います。」
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宮西ならではの〈セックス〉を題材にした極めて厳粛な姿勢、そして〈性〉の世界を体現する圧倒的な技術量を存分に発揮した個展「ペニス主義」。6月29日(金)19:00からは打楽の本田龍と共に朗読パフォーマンスも行う。〈性〉の蠢きを目で見て、全身で感じてみてはいかがだろうか。2012年の宮西計三の「ペニス主義」、その姿をぜひ脳裏に刻んでいただきたい。
◇宮西計三個展「ペニス主義」◇
*6月25日~6月30日 平日12時~19時 土曜12時~17時
*特別イベント&展覧会パーティー 宮西計三新作詩朗読
aprooriライブMoan&Poems【呻吟と詩】
6月29日(金)19:00~【入場料3,000円ドリンク付き】
出演:宮西計三(朗読)本田龍(打楽)
http://www.vanilla-gallery.com/archives/2012/20120625.html