ブルース・ラ・ブルース写真展「POLAROID RAGE :SURVEY 2000 - 2010 」レビュー

 

   

cornflakes are counterrevolutionary

masturbation is counterrevolutionary madonna is

counterrevolutionary

war is not the answer. revolution is.

heter sexuality is the

opiate pf the masses put your marxism where your mouth is

hollywood is

counterrevolutionary day dreams of a revolutionary.

    

 

 

画廊の壁三面にわたって張り巡らされた約440枚のポラロイド写真。
 様々な光景が写し出されたそれらを少し離れたところから眺めやると、赤や青や黄や黒等の色彩ばかりが入り混じって、まるでブルース氏の衝動の飛沫が白い壁にぶつけられて四散した飛沫の様にも見える。 血や汗や精液や、その他諸々が飛び散った、ヴァイオレンスな痕跡。

 ブルース・ラ・ブルースはカナダ在住のアーティストで、90年代にゲイポルノ・アート・フィルムを発表し一躍有名となった。その過激な作風からアート・シーンの異端児としてカルト的な人気を博し、現在も欧米で写真展覧会を多数行っている。
 今回展示されているポラロイド写真は、ブルース氏が2000年から2010年にかけて行った実験的パフォーマンスを撮影したものであり、全部で11の種類のパフォーマンスの一連の光景が記録されている。その内容はパフォーマンスの種類によって細かな違いはあるものの、大体において血糊の飛び散る室内で、複数の男女(もしくは男でも女でもない人々とかゾンビとか)が互いに銃や刃物を突き付けあっている、といったものだ。血まみれの室内や銃、シスター、豚の頭部の被り物などはブルース氏定番のモチーフと言ってもよいものだろうが、今回は更にいくつかのシリーズのパフォーマンスでは、国旗、迷彩服、ターバンを巻いた人々などの姿が写されており、定番のパターンを使用しつつも明らかに9.11の同時多発テロとそれに関連した戦争を意識したと思われるものも収録されている。

 上の様に説明すると何やらとてもスプラッタで怖ろしい内容の写真の様に思われるかも知れないが、実際にご覧頂ければ分かるように、そんなことは全くない。むしろそういった怖ろしさとは正反対の雰囲気を醸し出している。人々は戯れるように血糊に塗れ、笑いながら互いに凶器を向け合っているのだ。滑稽なポーズをしてみたり、カッコつけた立ち方をしてみたり、さながらホームパーティの最中にポラロイドカメラを向けられました、といった雰囲気だ。観ていると、どうも奇妙な感じを覚える。
 だがこの妙なミスマッチこそ、ブルース氏ならではの「狂気」の表現なのではないか。
 先日の「L.A.Zombie」上映イベントで、田亀源五郎氏がブルース氏の作風を「意図的に人の神経を逆撫でするような傾向がある」と仰っていたが、それを聞いて、成程、と思うところがあった。ブルースの作品は、映画でも写真でも、観る者に安定した解釈を与えない。どぎついセクシャルな描写と暴力的なモチーフをふんだんに使っているのに、雰囲気は妙にハッピーだったりセンチメンタルだったりする。「これはこういう意味なのだな」という解釈をさせてくれない。そこにこそブルース氏の過激な異端としての魅力があるのだろう。

 結局のところ、この作品、この表現にどのような意味があるのか、作者の意図は何なのか…ブルース氏の作品を前にして、この様な問いはナンセンスなのかも知れない。
 今回の展示につけられたタイトルは「POLAROID RAGE」、「RAGE」とは「怒り」である。ありとあらゆるもの―それは日常であり、ヘテロセクシャルであり、私達が当たり前と思って疑わない既存の価値観であるだろう―に対する原初的な破壊衝動が、「意義」や「思想」と言った言葉で固定化される以前の「怒り」が、このポラロイドにはぶちまけられているのではないか。
 
 インスタントなポラロイド写真のため、展示されている写真の中にはブレているものや何も写っていないもの、何が写っているのか分からないものなどもある。だが構成も照明の調節もきちんとなされていないがゆえの生々しさは、かえってブルース氏の衝動が剥き出しになって伝わってくる様で面白い。

 「War is not the answer . Revolution is .

 「正義」でもなく、「邪悪」でもなく、ただ常に壊し続けようとする「革命」の衝動がブルース氏の答えなのだとしたら、彼の「革命」は、きっとまだまだ終わらない。
 そのぶちまけられた衝動の一端を、この展覧会にて是非ご覧になって頂きたい。

(画廊スタッフ 伊藤)