天野大吉展レビュー「神話的グロテスクの偶像」

 

 

天野大吉展レビュー~「神話的グロテスクの偶像」

 

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   その強烈ながらも魅せられてやまない鮮やかな色彩に、或いはその美しい独特のフォルムに、ともすれば我々はそれらを形作る「もの」を認識するより前に、作品に見入ってしまうだろう。

そして気付き慄く、羽や泥、蟲、そして鱗の合間から浮かび上がる、眼、鼻、顎、―我々人間の、輪郭に。

 

 

 

 

  天野氏の作品を上手く言葉にするのは至難の業であるが、あえてひとつ言葉を当てるとするならば、「神話的グロテスク」とでも云おうか。

 生々しくぬめる魚の腸、鱗、蛸、蚕などの素材が、天野氏の卓越した技術によって神秘的な美しさを帯びて人体を覆い、絡まり、繋がる。そこには荒々しい生命の力強さやあられもない放流の迫力が、永遠さえ感じさせる静謐の内に表されている。

 その圧倒的な生命の力の内にあっては人間の身体はもはや個体を超え境界線をなくし様々なものと繋がりあってひとつの幻想的な偶像となるのだ。

 それは上辺の意味での「自然との一体」ではなく、もっと深遠で根源的な生命と繋がるということであり、その溢れ出る命のグロテスクな美しさに垣間見る人体の奇妙に神秘的な存在に、我々は無意識のうちに恐怖と戦慄、そして同時に不思議な恍惚感を覚えることであろう。 

 「宗教」は往々にして善と悪、聖と邪を分かつものかもしれない。だが「神話」は違う。「神話」はおよそ全ての生存、生きとし生けるものの奔放な力を是認し、神化する。

そういう意味で、天野氏の作品が生み出す世界観は「宗教的」ではなく「神話的」であるのではないか、と私は感じる。

 

 今回の天野氏の個展のタイトルは“HumanNature”、これを日本語に訳すと「人間性」といった意味になる。

 迸る生命の神秘的な力強さを司る、グロテスクな美神としての人間の存在=人間性が静かに湛えられた天野氏の作品を、どうぞご高覧頂きたい。

(画廊スタッフ:伊藤)

 

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天野大吉展2

 

■天野大吉展“Human Nature”

■11月15日~11月27日

■於ヴァニラ画廊(月曜~金曜:12時~19時/土曜:12時~17時/日曜休廊)