美濃村晃(喜多玲子)生誕90周年記念展示 「昭和異端風俗絵模様」イベントレビュー

 

 

美濃村晃(喜多玲子)生誕90周年記念展示 「昭和異端風俗絵模様」
http://www.vanilla-gallery.com/

 

 

 

 

美濃村 サイト用2.jpg会期: 621()73()

 

                                           ----- ----- ----- -----                                                                                                                                     美濃村晃(喜多玲子)/プロフィール

 本名、須磨利之。1920年(大正92月)京都市生まれ。 画家としての筆名は「喜多玲子」であるが、縄師「美濃村晃」の名前も多く使用した。小説家としての筆名は「円城寺達」をはじめ無数にある。幼少のころに見た金森観陽の挿絵(子母沢寛『天狗の女』に掲載された、女が蔵の中で全裸に後手で縛られている折檻シーン)に衝撃を受けアブノーマルに目覚めたとされる。

 太平洋戦争後、大阪の新聞社に就職するも、『奇譚クラブ』の編集に関わり、日本初のSM専門誌にと成長させていく。喜多玲子の名前で「責め絵」を描き、その質の高い構成力と無駄のない筆致で、淫靡な情念を見事に描きあげ多くの愛好家の共感を獲得する。他にもさまざまなジャンルの同誌の読物にイラストを、それぞれ別の筆名で巧妙に描き分けた。その頃に大阪府警主催の「防犯博覧会」を訪れた伊藤晴雨と、飛田の遊郭で偶然に出会い、後に外弟子となる。

 やがて東京に移り1953年『風俗草紙』に作品を発表、56年には自ら編集人として『裏窓』を創刊する。のちに東京三世社系の『SMセレクト』をメインとする各誌、サン出版系の『SMコレクター』『アブハンター』『SM奇譚』などに挿画家として活躍し、さらに多くのペンネームを使い、作家としても小説、読物を書いた。

 50代に脳溢血で倒れてからは一線からは退き、1992年(平成4年)、72歳の天寿を全うする。徹底したサービス精神と、寝食を忘れても好きなことに没頭する職人肌。偉大なる先駆者として、まさに八面六臂の活躍をした。日本のSM誌の歴史はこの人が作り上げたと言っても過言ではない。今年2010年は氏の生誕90周年にあたる。

 

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※※特別トークイベントレビュー※※
 626 16:0018:00
 入場料/¥1,500
 
 出演:早乙女宏美・鏡堂みやび・伊藤文學

過日、早乙女宏美さんと鏡堂みやび氏による特別トークイベントが開催されました。残念ながら、伊藤文學氏は欠席となりましたが、美濃村氏出演の貴重な映像上映から始まり、「奇譚倶楽部」発行当時の編集スタイルから美濃村氏の名言、そして美濃村氏の好んだ縛り方まで話題は多岐にわたり、とても有意義なイベントとなりました。

実際に美濃村氏と生前に関わりのあったお二人の思いは並々ならぬもので、編集者としても関わりあった鏡堂氏、そしてインタビュアーとして関わりあった早乙女さん、両氏の語る美濃村氏の姿は様々な顔を持ち、サービス精神が旺盛な人物だったことを彷彿とさせました。今となっては、美濃村氏が語る話はどこまでが本当でどこまでが嘘だったなのか。本当に人を喜ばせることが旺盛な人だったから、もしかしたら皆の夢を壊さない為に、美濃村晃・喜多玲子・その他多くのペンネームを操る魔術師だったのではとも語られました。SMをファンタジーとして紡ぎ続けてくれた偉大なる先人だったと。

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美濃村晃名義の作品が、これほど一同に展示されたことはないので、今回展示の作品を実際にご覧になって、率直な揺ぎ無いSMへの愛情、そして女性への愛情を目の当たりに感じると仰られる方も多く、SMという概念を文化として定着させた功労者として、その業績はこれからも末永く評価されるべきと感じ入りました。

鏡堂氏が編集者として関わっていた「SMクラブ」(日本出版社)では、喜多玲子賞を主催し投稿作品を募り、一緒に選考した思い出や、実際に緊縛していた縄を頂戴した話、マニアからの注文で絹本に責め絵を描いていた時代の話、飛田の遊郭で責められ女郎をモデルにショーを開催していた頃の話、伊藤晴雨との親交など様々なエピソードが語られました。
喜多玲子を女性だとばかり思い込み、美濃村晃を決して同一人物だとは信じなかった、晴雨翁の無邪気な人柄なども偲ばれ、この時代のマニアのおおらかな交流を窺い知ることもでき、興味の尽きないうちにお開きとなりました。

美濃村晃氏の名言、「縄師とは女を綺麗に縛るのが仕事ではなく、縛って女を綺麗にするのが仕事だ。」

彼の揺ぎなく愛した性の世界観、昭和のSM誌を作り上げた巨匠「美濃村晃」そして「喜多玲子」の世界を、是非この機会にご高覧頂けたら幸いです。
そして晩年の美濃村氏に薫陶を受けた、鏡堂みやび氏の回顧展も8月末にヴァニラ画廊で開催されますので、どうぞお楽しみに。