2024年10月16日(水) 本日はヴァニラ画廊・休廊日でございます。

'13/7/1 〜 8/3  MELANIE PULLEN メラニープーレン 写真展
「High Fashion Crime Scenes」

新画廊 展示室 A & B / 入場料500円
営業時間 月曜日から木曜日12:00〜19:00
金 12:00〜20:00 土・祝日12:00〜17:00 入場料500円

メラニー・プーレン(1975年生まれ)はアメリカを拠点に、世界各地で活動を続ける写真家です。独学で試行錯誤の中で写真技術を学び、「High Fashion Crime Scenes」シリーズを発表、センセーショナルな反響を巻き起こしました。
このシリーズはニューヨーク市警およびロサンゼルス市警の犯行現場ファイルに基づく100枚を超える写真からなるメラニーの代表作です。

自身について、「偶然」を大事にしているが、実際には「気が狂いそうになるまで自分自身を追い込む」完全主義者である、と語るメラニーは、このシリーズを制作するにあたり、作品ごとに80名近いスタッフとモデルを使用し、時には1作品に最長で1か月かけて制作を行いました。衣装とアクセサリーには1300万ドル以上をかけ、煌びやかなハイブランドを散りばめ、犯罪現場を(多くはその被害者と共に)再構築する事によって、バイオレンス・イメージを容易に受け取る私達に、暴力の本質とは何かを深く問いかけます。

今回はその「High Fashion Crime Scenes」シリーズと特製本を日本で初めて展示販売致します。

メラニー・プーレンプロフィールMELANIE PULLEN

1975年ニューヨーク市に生まれる。現在ロサンゼルス、カリフォルニア州在住。

ニューヨークのウェストビレッジで育ったメラニーは、Audubon Magazineの写真エディターでありThe Guilfoyle Reportの創設者でもある祖母アン・ギルフォイルから影響を受け、(メラニーが子供の頃、家族には作家、出版業者、詩人、画家がいた。70年代から80年代には、幼年期の 家にAndy Warhol, Allen Ginsberg, Emily Glen, Shel Silversteinらが頻繁に訪れていた。)10代で最初のカメラを手に入れる。その後は独学で様々な刊行物、雑誌、カタログ、レコードレーベル用に写真を撮り始め、Beckの2004年のアルバムGueroおよびThe Informationを手がけているほか、Devendra Banhart、JoannaNewsom、Rock Kills Kid、The Black Keys等数多くのミュージシャンの写真を撮り下ろしている。

High Fashion CrimeScenesシリーズ・violent timesシリーズにて、アメリカ国内外で幅広く個展・グループ展を開催している。

死体への想像力 
飯沢耕太郎(写真評論家)

メラニー・プーレンの「ハイ・ファッション・クライム・シーンズ」はとても興味深い写真シリーズだ。この作品の元になっているいわゆる犯罪現場写真は、警察に属する専門カメラマンによって、19世紀以来大量に撮影され続けてきた。だがこれらが、単純に証拠を保存するためという理由だけでなく、むしろわれわれの本質的な「見たい」という欲望に応えるために撮影されてきたことは、1980年代以来、この種の写真のアンソロジー写真集が多数刊行されていることでもわかる。ではなぜ、われわれは犯罪現場写真に惹かれるのか。端的にいえば、それはそこに死体が写っているためだ。
 死体は非日常の極みであるだけでなく、それ自体が不思議な吸引力を秘めている。いうまでもなく、メラニー・プーレンもそれに魅せられた一人だ。彼女はこの作品の制作の動機について、写真集のあとがきに面白い話を書いている。プーレンは子供の頃、自然写真のコンテストの審査をしていた祖母の部屋で、一枚の写真を見せられた。コンテストの最高賞を受賞したその作品には、雪原と樹以外には何も写っていないように思えた。ところが、写真をよく見ると、樹に向かって続いている小さな動物の足跡が、ある場所で不意に途絶えている。つまりそこには、猛禽が動物を襲い、殺すという見えないドラマが秘められていたのだ。
 この「見えないドラマ」を見出すという想像力こそが プーレンの写真制作の鍵になっていることは間違いない。彼女が丹念に仕組んだ殺人現場には、必ず何かもっと複雑で、表にはなかなか現れてこない物語が埋め込まれているのだ。それをあたかも推理小説のように読み解きつつ、モデルたちが身に纏う、洗練された「ハイ・ファッション」を愉しむことができれば、これに勝る極上の視覚的体験はないだろう。