ヴァニラ画廊では8/22 9/3の日程で真珠子個展「花びらうらない」を開催致します。

 

◆真珠子個展「花びらうらない」◆

 

822日~93日 

平日12時~19時 土日祝12時~17時(イベント開催により変動する場合がございます)

■入場料600

 

「お花なんてキライ。リボンがいい。」そう言って、真珠子は、今までずっとリボン畑でリボンの栽培をしてきました。それは、「お花は何もしなくても美しい。だけど、リボンは自ら結ぶものだから、生まれたときから美しさを約束されているお花よりも、自分から美しさを作っていこうとするリボン的美しさの方が、好き」だったからです。だけど、震災の後、咲いているお花たちを見て、その考えは変わってきました。真珠子は、リボンからお花へシフトしつつあるのでしょうか。リボンは、よく見ると二つの花びらでした。これから3つ、4つ、5つ・・・と増えていくかもしれません。

震災直後に描いた絵、「祈る」が、通常の閲覧数の10倍を記録した時、祈りの大切さを痛感し、単身、神の住む島、バリ島に渡り、世界無形文化遺産であるバティックを学び、その場で体感したすべてを作品に注ぎ現地で制作した真珠子更紗作品など初披露。

 真珠子 メイン画像小.jpg

 

 展覧会開催にあたり、美術家・真珠子さんに今展覧会についてお聞き致しました。

 

●真珠子さんがNHKエンタープライズのプロジェクト(5人の女性映像作家によるフルアニメーションのミュージックビデオ製作)のプロフィールで17歳で絵に目覚めて、20歳くらいから女の子を描き始めたということが書いてあって、それがとても意外でした。

絵を描くモチーフとしては最初から女の子ではなかったのですか?

 

真珠子:その頃はダリなどシュールレアリスムが好きな時期で、シュールな絵を考えたり、コンセプチュアルなものが好きでした。高校の美術展で50号の油絵を出したときにそれが賞に入り共感を得られた嬉しさがとてもあり、美術を突き詰めてみたいと思いました。ふと女の子だと思ったのは二十歳でした。

 

●そこから精力的な作家活動を続け、今回の個展で出品する作品が更紗作品ですが、それには311日の震災の後からの作品ですね。バリ島に行って学ばれたという事ですが、今回のテーマが祈りということで、この表現方法を決めたのでしょうか。

 

真珠子:そうですね。今回のコンセプトでも謳っている通り、震災後、祈りは、切実な日常になりました。ここで一度そのことを認識したら、バリ島に出会いました。祈りが日常生活の中にどのように溶け込んでいて、それが作品になっていくのかが知りたいと思いました。そこで伝統的な更紗をやってみようと思いました。

更紗は一度体験したことがあって、江戸小紋というものなのですが、新宿の落合に江戸からやっている工房があり、そこで教えてもらいました。元々着物に興味があって、自分も着たいというのももちろん、伝統的な部分をどんどん知りたくなってきて、はまっていた時期がありました。更紗もずっとやってみたいと思っていました。

 

●バリ島は神の国というイメージがとてもあります。

真珠子:そうですね。絵だけではなくて、踊ったりとか奏でたりとか皆色んなことをやっていました。それは神様の為なんです。歌とか踊りとか芸術の全てが神様に捧げるためのもの。この島に住まわせて下さい。お願いしますという意味で、作ったりしているそうです。

●現地へ行って、作品作りに対する気持ちは変わりましたか?

真珠子:私はそれまで全く間逆で、神様とか思ったこともありませんでした。自分が作家としてどれだけ目立ってなんぼの人間の世界で、人々と共感もしたいし驚きも与えたいというスタンスでずっとやってきたので、人のことしか考えてなかったので突然言われた神の存在にとてもびっくりしました。作っている時もとても葛藤がありましたね。バリの人達はすごく神様に仕えているという、神の為だという気持ちが強くて。神様にうまく描ける様にお祈りしてから描きなさいと私にも言うんです。その方は全部日本語で教えてくれたんですけど、「カリスマがつく」っておっしゃっていて、日本語でカリスマって流行の言葉だけど、その人は「パワーが宿る」っていう意味で言っていたんだと思います。

そのパワーって、神様のためであることが、結局は人間のためでもあるのではないかと最近は思えてきました。バリに行ってからは、今までの制作と何かが違います。制作の最中に鍋で蝋がグツグツ煮えてるのを見たりすると、自分の心の中のぐつぐつが実際目に見える現象として具現化した物を見ているようで…それを体感することによってすごく落ち着いたんです。初めての体験で、何だこの現象は!と思いました。

それと同じように、私のその沸騰している部分が放出されている作品を見た人が、場合によってはそうやって、祈ったり癒さたりすることもあるかもしれないというのは、大きな発見でした。

 

●神様には色々種類があって、バリ島の神様は自然の中に宿る神というイメージがあります。真珠子さんから感じる巫女性もそれに近いものを感じるので、バリ島と真珠子さんの出身の天草は近いのかなと思います。

真珠子:それはとても感じました。でも天草は小さい時から生活している先入観と親族もいるし、ちょっと違うんですよ。何にも知らない所から祈りの島に行ったので。ただ違ったけど共通する部分も多かったですね。

今、自分の制作している更紗と刺青ってとても近いなと思っていたんです。

丹後縮緬の生地に、熱い蝋でじわ~としみこませて描く時、いつも蚕のことを思っていました。

蚕、こんなに美しいもの紡ぎ出したんだねって。それからだんだん絹の表面の質感が、女の柔肌に見えてきたんです。

そしたらなんと最近、道ばたで彫り師にナンパされました。笑

追いかけてきて、「彫りたくなるような肌です。」って。おかしかったです。

きてると思ったら呼ばれましたね 笑

エステの後だったので、効果あったみたいで嬉しかったです。笑

 

 

●彫師さんに聞くと、女性に彫るのは男性に彫るのとぜんぜん違うっておっしゃってましたよ。最高のキャンバスですね 笑 

確かに彫り物って更紗の絵柄にちょっと似ている部分がありますね。

 

真珠子:そうなんです。密集した感じが今描きたいモチーフにすごく似通っているなっていうのをこの間気がつきました。着物に刺青をするみたいな感じで。

今回出品する中で、丹後縮緬のお振り袖に更紗を施したものがあるのですが、蝋を抜く前の蝋の線って良いですよね。蝋だけのも作ろうかなと。だから今回それを着物で残しました。

 

●どんな作品か楽しみですね。

真珠子:新作は不思議なものができましたよ。笑

植物なのか魚なのか鳥なのか…可愛いです。体は植物みたいにすーっと伸びているんだけども、お腹はグロい赤腹みたいなんです。私は赤腹が大嫌いで怖くて見るのも駄目って思ってたんですが、自分で描いてるんですね。

●それは不思議な生き物として描いているんですか?

真珠子:生命力みたいなものを描きたいと思ったときに、植物だけでは足りなくて、もっと血とかそういうものが植物の中に融合して不思議なものができました。そこには生きる力みたいなものをこめました。

 

●色使いが新作は変わったと思いました。今回のDMの作品も色使い、特に黄色が凄く魅力的ですね。

真珠子:黄色って凄いですよね。笑 黄色は薄々5~6年前から気にはなっていたんですけれど。笑 ずっとピンクが好きでよく使っていたんですけど、なんかファンシーなものだけだと耐えられなくなってきて、黄色を塗っていると天国のようなイメージがわいてきて、気持良いなと。それでバリに行ったらなんの躊躇も無く、黄色を塗っていましたね。

後、今回、わざとポップ調の作品も作るぞと決めて色を塗るときにピンク・水色と配色しても、出来上がってみたら緑が入っているのです。

絶対に植物の緑が入っちゃっている。無意識でした。仕方ない、今回は絶対に出る色なんだと思いました。

●イベントのアニメ活弁についてもお聞きしたいと思います。

2月に横浜でパフォーマンスを拝見した際に、(A woman is a woman is a woman. TPAMショーケース(国際舞台芸術ミーティング in 横浜2011))真珠子さんの声にトリップというか、フワーとしてしまって。

真珠子:友人とバリ島滞在の最終日に会ったのですが、(トースティーさんといって頭にトースターを乗せて気合いでパンを焼きながら歌ったり、山伏の訓練を受けている素敵な美女なのですが…)その方が私の声が祈りだっておっしゃっていて、1/fゆらぎとか波動とか調べたら新発見があるかもしれない。感覚的にたぶんそうだよっておっしゃって下さいました。

確かに昔、私が教師をしていた時に、どんなに怒って指導しても効果が無くて、まじめな話をしている時でもフワーッとあくびとかされるんですね。笑 

失礼だなと思っていたけれど、この声が天から与えられたものなら良しとしようと思いました。

 

●また巫女力が…!10月に真珠子さんが出演予定のサディスティックサーカスにも山形から最高位の山伏さんが来るんですよ。何か真珠子さんの声に呼ばれたのかもしれませんね 笑

個展・イベント・サディスティックサーカスと続きますが、是非たくさんの方に見て頂ければと思います。

※サディスティックサーカス(102()真珠子出演予定)

 

 

展覧会特別イベント

入場料600

特別イベント■真珠子アニメ紙芝居活弁ショー

入場料2,500(1ドリンク付)

827日(土)16時開場

特別ゲスト:山崎ナオコーラさんをお迎えして

(イベント中入場者以外は展示をご覧 頂く事ができませんので、ご了承下さい。)

 

 

 

真珠子イベント.jpg

 

 

作家プロフィール

天草出身。美術家。

絵を描くことから始まり、アニメーション制作、歌、陶芸、木彫、シルクスクリーンを手がける。

主な受賞歴

2004 - 雑誌「Illustration」の「ザ・チョイス」2004年度賞入賞。

2004 - NHK「デジタル・スタジアム」第191回田中秀幸セレクション受賞。

2004 - NHK「デジタル・スタジアム」佐藤可士和セレクション入選。

2005 - NHK「デジタル・スタジアム」丹下紘希セレクション入選。

DVD「デジタルスタジアム?デジスタ・キャラクターズ みうらじゅんセレクション」 に作品収録。

主な個展

2004 - 「やんちゃなおしおき秘宝館」展 (Lapnet Club、東京)

2006 - Ready for Lady」 (熊本市現代美術館ギャラリーG3、熊本)

2007 - 「姫すごろく『寵姫 花形姫』?私が姫じゃない理由って??」 (Lapnet Ship、東京)

2010 - 「おとめだち」 (カオリ座、東京)

2010 - 「おねえさんはリボン狂」(パラボリカ・ビス 東京)

 

 

皆様のお越しをお待ちしております。

 

 

 

 

 

ヴァニラ画廊での3度目の個展を開催する水元正也・展示を経るごとに、一段とその世界観に驚かされます。

深い水底のように穏やかでありながら、不穏な波紋を感じるフェティシズムを描きこんだ作品群。

その創作にまつわるお話を氏から伺いました。サイト用 水元.jpg

 

  水元さんの個展のタイトルは毎回興味深いですね。今回はあのチルチルミチルの
水元(以下・水):そうですね。「青い鳥」をもじったものです。

  水元さんの独特のアイロニーが感じられるタイトルですね。童話などはよく読まれていたのですか?
水:タイトルにそんなに深い意味はないですが、童話はいつもきれいごとで終わるのが嫌いなだけでひねくれたガキだったんですね。粗探しをするのが好きで。

水元さんの言葉のセンスが感じられます。作品のタイトルもとても面白いものが多くて
水:絵は完成してからタイトルを考えます。言葉から発想して絵を描くことは無いですね。
ある程度作品が完成してから、候補を決めてタイトルを決めていきます。
個展のタイトルの場合は、言葉の意味合いよりは音の響きで考えています。読んでいて音として心地よかったり、逆に引っかかったりというものの中から考えています。

  今回DMを拝見して思ったのは、昔より作品が穏やかになったような気がしますが、不穏度が増している印象を受けます。
水:そうですね。以前はぱっと見た感じのインパクトを追求していましたが、それよりは一見普通に見えて、よく見るとどこかあれ?というというものが好みになってきました。私はモデルさんの写真を撮ることから作品制作が始まるのですが、はじめにサンプルを用意して、モデルさんにこれならできるというものを選んでもらいます。無理に要求はしませんが、たまにノリでやってくれる人はいます。枚数をとってこれというものを選び、制作を行います。

  写真を絵にする時に、変えたりする部分はあるのでしょうか。
水:多少デフォルメしたりしますが、そんなに激しく変えたりはせず微調整程度です。
こちらがやらなくとも、モデルさんがデフォルメしてくれるので。笑

変えるとしたら指の角度や髪のかかり方とか小さな事です。

  今回の個展はどのくらい新作を予定していますか?
水:展示全ては作品を24点を予定しています。その内17点は新作です。
単純に言うと新作は旧作と比べると技術があがったと感じます。そして内容も前より痛々しい感じはなくなりました。今回は女性の顔メインです。1点顔じゃないのがありますが。自分でも毎回新作は悩んで製作しています。以前は顔全体が変形しているのが好きだったんですが、どんどん自分の好きなポイントが変化していてピンポイントで鼻の穴だけとか、歯並びとか、舌の裏がわとか、守備範囲が広がっているのか狭まっているのか。笑

  モデルさんによって描きたい部位は変わりますか?
水:それはあります。よく言われるのがどうせ変形させるならモデルなんて誰でもいいでしょと。それは本当につまらなくて、是非この人にこのポーズを、というものでなければここまで描きこめないと思います。この間もモデルさんにきれいな鼻の穴をしていますねと言ったら、「どこ見ているんですか!」と。笑 描きたい場所でした。今描いてて一番楽しいのは歯ですね。ただとても難しいです。参考にと色々な絵を見るのですが、中々うまい具合に歯を描いている画家を探すのは難しいです。

  日本は歯並びに関しては寛容な国だと思うのですが、どのような歯並びが一番好みですか?笑
水:基本的には全部好きですが、一番好きなのはぴったり綺麗に並んでいる歯並びですね。
でもそこまで綺麗だと別に絵に書く必要はないかなと思いますが

  今回作品の中でこだわった部分はありますか?
水:はい。今回は髪の毛にこだわりました。わりと今まではざっと面取りでやっていたのですが、今は一本一本描いています。描いていてとても楽しいです。終わるまで時間もかかりますし、絵全体のバランスも見て描かなくてはいけなのですが

こだわりの対象、フェティシズムは変化していますか?
水:今まで好きだったものはずっと変らないと思いますが、今まで気にも留めてなかった部分が好きになるということはあります。今は歯磨きをしている女性がすごく気になります。でも中々歯磨きしてくれと頼み辛くて

やはり口に関わってくる部分ですね。
水:でも自分のフェティシズムとしては顔は2番目で、1番目は足ですね。ただ足を描くと主観が入りすぎて、あまりに素の自分が出すぎてしまって、人様にさらせないです。笑
それがあるのでしっかりと作品としては残していないのですが、落書き程度ですね。

足のどの部分が一番こだわりポイントですか?
水:一番好きなのは指の付け根の関節部分のへこんでいる所


サイト用画像 水元2.jpg


  鉛筆にこだわって描いている理由はありますか?
水:もともとモノクロが好きというのもあるのですが、僕の大学の先生の作品が油絵なのですが、ずっと灰色で描いていて。その絵がとても好きで、その影響が強いです。
鉛筆自体は制作を始めた頃は全く使っていなくて、もともとは油絵を描いていたのですが、どうにもうまく使いこなせなくて、絵を描くのが嫌になった時期がありました。半年ぐらい何にも描けなくて、ただグループ展が決まっていた時期で、何か描かなくてはと焦っていた時期に、一からやり直そうと思って鉛筆を使い出しました。それがこんなに長く続くとは自分でも思ってみなかった事です。結局鉛筆を使って制作をしている期間のほうが長くなってしまいました。

影響を受けた方はいらっしゃいますか?
水:一番は鴨居玲ですね。他にはフランシスベーコンやギーガー、べクシンスキー、ラインハルト・サビエ、鉛筆画の林良文さんも大好きです。

  水元さんの昔の作品に比べて画面の中の陰影がより鮮烈になっているような気がします。
水:否、鉛筆を使い始めた頃はもっと真っ黒だったんです。その中からハイライトで人物を浮かび上がらせるような作品でした。その後どんどん全体像を描きこむようになって、今はまた陰影の部分をより濃く描くようになりました。

  どんどん細部まで描きこむ作品が増えていますね。一枚どのくらいで描き上げるのでしょうか。
水:早くて2ヶ月から3ヶ月かかります。数枚を同時進行で描いています。完成したものを寝かせて、その後客観的に見ておかしいところがあれば修正を加えます。

  完成作品は人物像の上にひび割れや斜線が入っていたり、完成作品の上から何か技法を加えるというのが多く見られますね。
水:ほぼその技法を施す瞬間のために絵を描いてます。あの瞬間のドキドキ感は他には味わえません。うまくいけば自分が思っている以上の良い効果を得られるし、だめだったら自分が今まで描いていたものが全て台無しになるリスクの高さその瞬間にサドとマゾの気分が同時に味わえるという笑。今まで自分がやってきたものを壊すという攻撃的な気持ちと、むちゃくちゃにされてしまうのではという恐怖!笑

それを経て描きあがった作品が今回揃うわけですね。ますます新作を拝見するのが楽しみです。

いよいよ516()から展覧会がスタート致します。その深遠なるフェティシズムの底を、是非ご高覧下さい。サイト用画像 水元 3.jpg

 





 

 

照沼ファリーザ展「食欲と性欲」照沼 サイトトップ.jpg96日よりスタートする展覧会前にヴァニラ学園にて行われたイベント「恋愛法廷」の中で、自身の作品について語って頂きました。

 

―ご自身で写真を撮られるようになったのはどのような経緯からでしょうか。

 AV女優を始めて5年くらいなのですけれど、最初は何もわからないから皆大人で監督とかスチールさんも凄い人で、私のエロスなんて見透かされている感じのイメージだったんですが、3年目くらいから、あれそうでもないかな…と 笑

私は私。私はこうゆうのが表現したいっていうのが出てきて、自分のイメージするエッチで可愛い作品が作りたいと思うようになり制作を始めました。

 

―作品をすべてセルフポートレートで撮られるのは何か意図があるのでしょうか。

 やっぱり作品の良さや伝えたい部分がそれをわかっている人が演じた方が良いと思います。私が良いと思うものを作るためには、「これ何が良いんだろう」って思っている可愛い子を使うよりも、自分が被写体になる方が説得力もあるし、自分の意思で制作できるので、自分でモデルもやっています。照沼 プロフィール用写真.jpg

 

―照沼さんの作品はどれも女性らしいですね。可愛くてエロいです。

 綺麗とか格好いいって言葉は憧れで、自分とは別物な感じがします。可愛いって言葉は目下な感じで感情移入しないと出てこない言葉ですよね。

 

―照沼さんの写真は色使いなんかも少しグロテスクな所があって、それはご自分の中で意識はされているのでしょうか?

 自分はグロいのが好きなわけではなくて、逆に潔癖な部分が強いのですが、いやらしいものとか、いけないものだと感じる心や恥ずかしいという感情にハっとする所があります。ぶっかけとかメッシー系だとぐちゃぐちゃに汚されたりとかロリ系の可愛いって感じの人が可哀想な感じになるのが好きです。可愛くてお人形さんみたいなドレスとか着ているんだけれども、それだけで可愛いというよりも、そこで百足が足に乗っかっちゃっているような可哀想な感じが大好きなんです。可哀想っていうのは可愛いをより引き立てると思います。そうは言ってもTheSMっていう感じではなく作品を制作したいです。この写真は私の中の趣味がとても現れている感じです。

 

―照沼さんの中で「食欲と性欲」というのはどのようなテーマなんでしょうか?

 私は性についてとか質問されたり、話さなくてはいけない時に、よく食欲に置き換えて話をすることが多いです。「どういうSEXが好き?」という質問に対して、「その日による」って上手く答えられます。贅沢なご馳走が良い時もあればお茶漬けが良い時もある。存分に愛して欲しい時も、唾つけて入れてっていう時もある。結構色々な事で例えられたりするんです。とても近くて似ているものだと思います。初めて男の人とお付き合いした時に、その人の前でご飯が食べられなかったんです。お腹すいてると思われるのが恥ずかしくて…食べたいって思っている事を知られる事が恥ずかしかった。皆さんHな事については恥ずかしいって思ったりするけれど、彼氏と食べ放題に行ったりするじゃないですか。それは私の中ではとても恥ずかしい。でもその人のセンスによって何が恥ずかしいと思うかはその人それぞれだと思うんですが、女性ならではの乙女心とかそういった恥じらいの部分を傷つけるという意味で、「綺麗で可愛いお人形さん」でいたいのに、そういう欲望の部分が自分にあるって嫌だなと思う乙女心を表現したいのです。照沼2.jpg

 

 ―睡眠欲は如何でしょうか?笑

 笑 睡眠は視覚的にも地味ですし。笑 

行為に背徳感とか恥じらいが無いので作品には入れていません。

 

―写真展では大体何点ぐらい展示予定ですか?

 まだ未発表の新作が20点ぐらいで、以前発表したものとあわせて70点くらいを予定してます。凄く楽しい展示になると思いますので是非見にいらして下さい。ちょっと胃がもたれるかもしれないですけれど 笑

 

はしたない、恥ずかしい。乙女心を傷つけるものたち。でも翻弄されてしまう。

可愛いを詰め込んだポップな作風の中に潜む毒々しい欲望を覗かせる、乙女心満点な照沼ファリーザの写真展・展示は96()918()です。

照沼ファリーザ/TERUNUMA  FAREEZA プロフィール

東京生まれ。日本とシリアのハーフ。2008年、写真家としてデビュー。

20093月に開催されたアートイベント『GEISAI12』において多くの審査委員、アート関係者に絶賛され、審査員賞を受賞。20095月に新宿、6月には渋谷にて写真展を開催。セルフ・ポートレートという手法で可愛らしくポップな雰囲気ながらも淫靡でフェティッシュな世界観を表現している作品は日本、台湾等の各メディアに取り上げられ話題となる。2010年9月には銀座ヴァニラ画廊にて個展開催予定。

写真家以外のもう一つの顔として2005AVデビュー。以来、およそ4年間で300本以上の作品に出演、ロリ系のルックスとNGなしの変態系実力派プレイでトップクラスの人気を誇り、2010年からは企画から関わり監督としても活動している。

20097月、個人事務所『株式会社fanfan』を設立、写真家「照沼ファリーザ」として、AV女優、監督「晶エリー(akiraelly)」として、またファリーザ名義でLIVEハウス等で音楽活動を行うなど幅広く活動している。

 

911()17時~からは☆照沼ファリーザ特別トークイベントも開催致します。
入場料1500(1ドリンク付) ゲスト:AVライター:雨宮まみ

 

皆様のお越しをお待ちしております。

 

 

   ■ 水元正也展「王子様の口づけは、まだかしら」

■5月31日(月)
~6月5日(土)


 「怪物と闘う者は、その過程で自分自身も怪 物になることがないよう、気をつけねばならない。深淵をのぞきこむとき、その深淵もこちらを見つめているのだ。」
―― フリードリヒ・ニーチェ
『ツァラツゥストラハはかく語りき』


 なぜ正義は勝つのか。あるいは勝たなけれ ばならないのか。なぜ悪は滅びるのか。あるいは滅びたものが悪だったのか。正義は誰の味方か。悪は誰のために退治されるのか
 闇は闇からしか見えない。そこに光を当て 照らすのではなく、その中に潜り込み、目が慣れてくるのを息を殺してじっと待つしかない。
 違和感。私は自分の作品が靴の中の小石に なればいいと願っている。明快な答えを出すことには興味がない。簡単に言葉にはできないこと、不可解でグレーなものを表現し、探っていきたい。


昨年大きな話題を呼んだ水元正也の展覧会を 今年も開催致します。
その奇異なモチーフ選びや、制作について画 廊オーナーによるインタビューをお届けいたします。





20100524_949233.jpg巽オーナー(以下巽) 水元さんの展覧会のタイトルはいつもすごく面白いのですが、今回は逆説的に皮肉をこめてつけたんですか?


水元(以下水元) たまたま家に白 雪姫の古い本があって読み返してみたのです。
もし王子様が来なかったら…という意味よりも音の響きでつけました。


巽 ここに描かれている女 性たちはとても王子様の口づけを待っている雰囲気じゃないのですが、タイトルとモチーフのギャップがとても面白いですね。
「怪物と闘うものはその過程で自分自身が怪 物となることがないよう気をつけなければならない」とニーチェの言葉を引用されていますね。


水元 そうですね。ときど きニーチェを読んだりしていますが、もともとこの言葉は猟奇殺人の取材本の巻頭にも引用されていたものです。


巽 猟奇事件の犯人に取材 する立場の人が、この文章を引用しているとことですね。つまり相手の強烈なパワーに引っ張られないように自分自身を保ってないといけないという。水元さん の心の中にも、こういう絵のモチーフに強く惹きつけられる部分が内在していながら、それと自分自身が同一にならないようにという自制の意味を込めていると いうことでしょうか。


水元 自分がこういうもの が見たいということでモチーフを選んでいるのですが、自分の欲求が深すぎると作品を人が見るときに入りづらくなる。自分の欲求を追求するのとさらに別の視 点から見て、冷静な視点を持つように心がけています。


巽 なるほど。自分の作品を客観的に見る視 点を持ちながら表現しているということですね。女性の顔を変形してみたい欲求や、その苦悶の表情に強い官能性を認めていらっしゃると思いますが、これはま だまだ水元さんのすべてではないということでしょうか?


水元 そうですね。まだ出 し切ってはいないと思います。


巽 もっと先に水元さんの まだ暴かれていないものがもっとあるってことですよね。ひょっとしたらまだまだ入口にすぎないかもしれない。もっと心の奥に、描けば描くほどに新しいモ チーフやテーマが表層に現れてくるかもしれないということですね。


水元 そうだと思います。


巽 ところでいま、水元さ んはおいくつでしたでしょうか?


水元 いま26歳です。


巽 それではもっとこれか ら期待できる(笑)。まだまだ自分の中でも未知なものが出てくる可能性はありますよね。


水元 そうですね。


巽 それは描いていて実感 できますか?


水元 やっぱり描いてい て、まだなにかもっと別な捉え方もできると自分の中で問答しています。どういったものが描きたいっていうのはもうずっとあるので、その中で今一番やりたい ことだったり、今できそうなことを厳選して描いています。


巽 作品の中の女性の顔が歪まされているの は水元さん自身の手によるものなのか、それとも他人の手によってやられているのかがとても気になります。自分自身がやっているという意識なのか、それとも ただ単に女性に変な顔をさせる手段として登場した手なのでしょうか。


水元 あまりサディス ティックな意味合いではないです。その変形した顔自体が好きなのです。それを美しいとか愛おしいとかエロティックに感じてしまうのです。


巽 そうすると、ここに描 かれている指は女性自身のものでもあるわけですね。作品によっては女性自らが変な顔を作っている。しかしこちらの作品は明らかに男の指ですよね?


水元 これは男性の指です ね。


巽 要するに、女性の顔を 変形させる手段としてあるわけで、指自体は男性のものでも女性のものでも水元さん的にはあまり意味がないということですか?


水元 そうですね。ただ鼻 フックとか器具を使うよりも指のほうがいいです。


田口 鼻に指を入れたりす るのとかって、女性のモデルさんは嫌がったりしませんか?


水元 そうですね。絵を描 くよりもモデルさんを探す方が難しいです(笑)。


巽 例えばこの洗濯バサミ で口を開いている作品は実際に写真を撮ったんですか?


水元 これは頼んでも誰も やってくれなかったので、他の写真を見て想像で描きました。ただこれの場合は顔よりも歯並びを描きたかった。


巽 歯並び!


水元 そうです。


巽 確かにこのモチーフの 歯並びはとても綺麗ですね。この変形された唇の中から覗く綺麗な歯並び。それが描きたかったのですか。


水元 そうですね。


巽 こういった所に美を見 出すという、水元さんならではの特別な美意識が作品のそこかしこに出ていますよね。しかし女性の協力や理解を得るのは大変そうですね。どうやってモデルを 頼むのですか。彼女たちはどんな反応をしますか?


水元 たいていの人は嫌が るのですが、一方で僕の作品を見てこういう風に描かれるのならやってもいいという人もいます。


巽 そういう奇特な方もい らっしゃるのですね(笑)。例えばこちらの作品は、自分で指を口に突っ込んで嘔吐している絵なのですが、実際にやってもらったのですか?


水元 これは、吐くまでは やってもらえなかったですが、近いところまではやって頂きました。

20100524_949234.jpg
巽 実際にモデルを頼んで写真を撮るという行為も、作品としてひとつ のなかに含まれているのですね。撮影して いる時も楽しまれている。


水元 そうですね(笑)。

巽 いつも女性の顔を変形させたらどうなる のかっていう眼差しで見ていのですね。


水元 そうですね。僕の場 合は女性の胸とかヌードにあまり興味がなくて、全くないわけではないのですけれども、恐らく他の一般男性にくらべると興味が薄いと思います。そのかわり顔 を歪めたり、嘔吐している姿を見たい。


巽 その願望は子供の頃からでしょうか?


水元 その頃はまだ余り深 く考えてはいなかったのですが、ただやっぱりまわりと自分はちょっと違うなっていうのはあって、それを隠して普通のふりをしていましたね。でも成長するに したがって無理がでてきまして、やっぱりなんか違うなって言うのは常に思っていました。


巽 大体いくつくらいから 自覚していたのでしょうか?


水元 そうですね。もう小学生くらいですね。


巽 ずいぶん早い自覚ですね!


水元 たとえばこの作品などの斜視の女の子などのちょっとした違和感が好きなのです。完全に白目を剥いちゃうとかではなく、ちょっと左右別の方を向いていて、なんとな く変な感じが するのが好ましい。顔を歪めたさせたりするのは好きですが、ナイフで傷つけたりといったことは絶対にしたくない。変形した皮膚の質感とかが好きです。


巽 女性の変形した皮膚や 皺といった、唾液や粘液も含めて質感がよく表現されていますね。涙もお好きですか?


水元 そうですね。涙が流れた後の、化粧が少し剥がれて筋ができたあたりとかが好きです(笑)。


巽 学生の頃の習作の、一 見普通に見える肖像画にもその辺りのこだわりが出ていますよね。この頃(2006) にはもう意図的 にそうやって描いていますか?


水元 そうですね。自分で は結構抑えているつもりでも、結局どこかで滲み出てしまっているのでしょうね。モデルになった方たちもそういう風に言います。やっぱり普通の肖像画と違うと。


巽 常に下から斜め上を見 上げたアングルで描かれていますよね。これは普段の女性と対面している時はこういった表情って見えない、意図的にポーズなどをとらせないと見られないもの で、特殊な違和感のアングルですよね。このとき、下から見上げている時に水元さんはどういったところを見て、どこを一番表現したいと思っているのですか?


水元 鼻と鼻の穴ですね。


巽 下から見上げることに よって、普段隠している鼻の穴を完全に覗けるという(笑)。ちなみに女性の顔のパーツでどこが一番恥ずかしいところだと思いますか?


水元 そうですね…口でしょうか。


巽 口とか見ていると水元さんは飽きなそうですね。


水元 あと、逆に口が隠れているのも好きなので、マスクしている女性が好きです。この季節になるとうれしくて(笑)。


田口 花粉症の季節は良い季節ですね(笑)。


水元 僕自身も花粉症なんで、自分も大変なんですけれど(笑)。マスクをしている女性の作品をいま描いていているので、この個展に出す予定です。


巽 わざと鼻から口を隠す ことによって、その存在感を逆に浮き立たせるみたいなことですよね。水元さんの意図することがわかってきました。女性が変な顔をする事によって生じる違和 感とか、独特な表情の質感とかに惹かれるっていうのは、水元さん自身の幼児体験で特に思い当たることはありますか?


水元 それはよく聞かれるのですけれど、特に何も無くて…気が付いたらそうなっていました。

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巽 たとえば水元さんはサディスティックな表情――たとえば叩い て驚くとか、恐怖に歪むとか、そういうのはあまり好きではないのでしょうか?


水元 そうですね。他の人 がやっているのを見る分には興味がありますけれど、自分ではやりたくはないですね。


巽 ということは、こういう絵を描かれているけれどもサディストというわけではない?


水元 それもよく言われるのですが、サディストではなく、おそらくマゾですね。ローアングルが多いのもそれが根本にあると思います。


巽 サディスティックな感性からすると、こういう顔をさせて被虐的な気分を味あわせて楽しむという王道があるのかもしれませんが、水元さんの場合は間逆なのですね。どちらかというと畏敬の念というか……


水元 そうですね。そうすることによって女性がより魅力的になります。変な顔をやめて普通に戻った状態も、より一層綺麗に見えますしね。


巽 よくわかりました。それが水元さんなりのとても正しい女性の顔の鑑賞の仕方なのだなと思いますね。すごく興味深いところです。前回の個展の際の文章に書いてありました が、「予定調和的に感動を強いるとか、そういったのが嫌いだ」と。ですから今回の展示もニュートラルな何もない気持ちでこういった作品を見た時の反応を問 いたいということで良いでしょうか。


水元 そうですね。嫌いとか見たくないという人はそういう反応でいいと思いますし。


巽 ただそれよりももっと深いところで、その人のどこかに引っかかってくる部分があるかというのが、やっぱり品と鑑賞者とが出会う楽しみですよね。水元さんにお話を聞いて、色々と非常に興味深かったです。展覧会を楽しみにしております。

5月17日(月)から吉田憲司の展覧会「CHI」を開催いたします。

個展開催にあたってアーティスト吉田憲司の創作についてお聞きしました。



5月17日(月)
~5月29日(土)

吉田憲司展「CHI」

ずっと以前から一貫してあるテーマ「生」と「死」、「暴力」と「平和」を根本にそこから生まれるさまざまな感情と、生活の中で見えたり発見したりする風景や色を空想と現実の狭間で表現しています。今回の個展では、都市で生活している私が毎日渦巻く暴力や虚無的な日常の中で感じ見た、新たな誕生の喜びや、明日への希望を作品に表現しました。


http://www.vanilla-gallery.com/gallery/yoshidak/yoshidak.html



20100503_891618.jpg―生まれてから5歳くらいまでタイで暮らしていたとの事ですが、その頃の記憶はありますか。


吉田(以下、吉) 断片的にですけど、不思議と、ちょうど30を越えたぐらいにオーストラリアに行った時に、断片的に色々な風景を思い出してきて、それを後で親とかに確認を取るとそのまんまだったていう、年取ると思いだすのかなって、最近ちょっと思ってますね。


―子供の頃からよく絵を描かれていたのですか?


吉 そうですね、まあ本当に子供の落書き程度だったんですけど。独りでいるのが好きだったみたいで、いつも色を塗ったり落書きをしていたみたいです。その頃ちょうど漫画をいつも描いていて、それで美術の先生に「何か描いてみろ」って言われて美術の時間に描いたのがそのまま入賞したみたいで。あまりその、意識してやっていたわけではないです。


―美術クラスのある高校に進学なされていますね。


吉 そうですね、唯一褒められていたのが絵だけだったので、絵が得意かも、って勝手に思って(笑)今でもあるのですけれど、取手松陽高校という学校で、今は芸術科のある珍しい県立高校なんですけど、まだ高校ができてすぐの時に、音楽クラスと美術クラスが分かれているだけの時に三期生として入ったので今ほどちゃんとしたシステムではなかったんですけど、それでもやっぱり普通の高校よりははるかに美術の授業に時間を割いています。


子供の頃から、親いわく変わった子だったらしくて、あまり自分では意識していなかったんですけど、結構変な夢ばっかり見ていてそれをいつも子供ながらに描いたりしていて。ちょうど中学、高校ぐらいの時、親父が買ってきた写真集を色々と見せてくれて、最初は武器系の方に興味があったのですが、ベトナム戦争の写真とかも載ってまして、そっちの方に衝撃を受けて、生と死っていうのは何なんだろう、みたいな、本当に漠然とですけど考え始めたのもちょうどその写真集を見たころからですね。


―その写真集の中で一番衝撃を受けたものってありますか?


吉 一番有名な、将校にベトコンの捕虜が路上で撃たれるやつですね。あれも載っていて、目にした瞬間、漠然と考えたのが「撃たれた後、どこに行くんだろう」ってことでした。あと死体のどぎついやつとかのがあって、それは見たくないけど必ず見てしまう、どこかで見なくてはいけないという感じでずっと見てた記憶はありますね。


―ちなみにその写真集は誰の写真集か覚えておりますか?


吉 それがわからないのです。もうボロボロになっちゃって、たぶん実家にあると思うんですけど。東京に出るまでは持っていってたんですけどね。


―作品へは影響を与えましたか?


吉 それを見たのがまだ10代のころだったので、それからは普通の高校生活を送りました。

美術クラスにはいたんですけれど志があるとかそういうのではなく、好きだからっていう感じで描いてた部分があるので、普通に大学行こうと思っていたのですが、途中で突然、普通の大学行ってどうするんだろう?何になるんだろう?って考え始めて、スポーツもやっていてそっちの方で結構いい感じのところまで行っていて、「体育大学に行け」と先生に言われていて。

その頃からですかね、「何で勝手に決められちゃうんだろう」という感じで反抗し始めて、結局それも全部蹴って、そのまま一浪して美術やってみたい、入ってみよう、っていうので途中から予備校に行き始めて、まあ結局全部落ちたんですけど。

武蔵野美術学園に入って、本格的に始めたのはそれからですね。その前にも油絵とかは高校でもやってましたけど、テーマとか与えられて描くっていうのは、予備校に入ってからですね。その頃からもうずっと、写真集を見た時の感覚を絵に描きたいなっていうのはいつも意識していました。


―大学に入ってすぐに一人旅に出てしまうのですね。「深夜特急」とか読まれていたのですか?


吉 正直行き始めた時は俺、「深夜特急」も知らなかったんですよ。で、たまたま親父の出張についていって中国行ったときにたまたま泊まったホテルの横が安宿街みたいので要はいろんな国の人が一人で歩いてるのを見て、ちょっとこういうの格好いいなあと思って自分もしてみたいって思ったのが始まりです。

そのすぐ後行き始めて、アジアを回ったというのは安いからっていうのが前提で、あとはやっぱり色々なものを見てみたいっていうのがありました。その時は意識と言うか、見てみたいという好奇心、あとはいろんなことを知りたい勢いだけで動いていたのですけど、時々最近思い出すと、必然だったのかな、行くべくして行ったのかな、という感じです。とにかく楽しかったですね。


―その時も絵は描かれていたのですか?


吉 結構描いてましたね。小さいスケッチブックみたいの持っていって、普段あまりスケッチとかはしないんですけれども、時間がある時、移動の時とか、落書きみたいに描いてました。


―今でもお手元に?


吉 ありますね、今でも時々スケッチブックを取り出してみて、おお、って思ったものはそれを参考にまた絵を描いたりしています。


20100503_891619.jpg―帰国してからはバンド活動をなさっていたと。


吉 バンドではサックスとトロンボーンをやっていました。最初はジャズやりたいっていって集まったんですけど、だんだんノイズの方向になっていって。3、4年やっていて。ハードコアプログレッシブジャズって名づけました。それでも27歳くらいのときに、楽器の才能はないと見極めて絵の方だけに専念しました。だけど今でもたまに機会あればみんなで集まってセッションしたりします。


―その後ヨーロッパ移住を目的にして、また旅に繰り出したとの事ですが。


吉 絵をやる上で一番行きたかったのはスペインだったんですけど、働きながら、自分で勉強して絵を描きたいてやっていけたらいいな、って漠然と思っていたんです。

その前にちょっとタイとかアジアとか回って遊んでから行こうと思って行ったんですけど、スペイン行く前に全部金使ってしまいまして、帰るに帰れなくてその場所で働いていつかヨーロッパ行こうって思っていたんですけど、なかなかお金も貯まらなくて。またタイに戻って働いてるときにオーストラリアの友人からオーストラリアに行けばビザなしで結構稼げるって言われたので、じゃあだったらそこ行って一気に稼いでからヨーロッパ行こう、と思っていたのですが、気付いたらオーストラリアを気に入っていて住み着いたって感じですね。


最初は想像を絶する自然とか、ずっと農場で働いていたので生活自体もワイルドな生活をしていたので、これは意外と面白いなって言うのと、そのオーストラリアっていうのも、アジアを回っていた時に漠然と英語圏への憧れがあって、一回フィリピンに行った時に周りの音楽とかが全部英語で、それが居心地良くて悪くないかもな、って漠然と思いました。その後はオーストラリアで毎日トラックを運転してたんですけど、海を見ると、ほんとに毎日「綺麗だなー」って思えて、それは今思い返しても、すごいですね。本当にオーストラリアでのトータル7年間、毎日それだけは変わらず感動してました。

1998年にビザがなかなかとれなかったので、一回日本に帰ってきたんですけど。


―その頃も絵は描かれていたのですか?


吉 そうですね、ちょうど27,8歳のころだったと思うんですけど、その頃に絵で何とかしていきたいって思い始めて、ちょうどそのビザがとれるまでの2年間、ずっと実家にいたんですけど、自分の形を見つけなきゃと感じて、すごく描いていましたね。スタイルを模索して・・・本当に絵を描き始めたってのはそれからですね。


―オーストラリア在住の時の作品は(今のものと)ちょっと違った雰囲気ですよね。


吉 そうですね。もうちょっと荒い感じでした。


―吉田さんの作品には不思議な生物が登場するのですが、オーストラリアの生物からインスパイアされて、というのはありますか?


吉 それは動物というよりも、結構人間の分身みたいなイメージで描いてます。


―これも鳥のような人のような、首輪が付いていたり、ある意味神の世界というか...


吉 今はだいぶその写真と変わってしまったんですけど、もともとは正面は普通の顔で浦は髑髏になっていて、二面性というか究極なイメージをいっこ置いてみたいな、と

描いている時って最初はテーマがあるんですけど、その瞬間その瞬間の思いつきで描き続けて、最終的には繋がるんですけれど。


―作品にはプリミティヴな衝動がありますよね。それはオーストラリアで開花したのでしょうか、もともと持っていてだからこそオーストラリアに惹かれたのでしょうか。
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吉 やっぱりオーストラリアに行かなければこういう絵にはならなかったと思いますし、何が良かったってあそこでは絵をやる上で完全に一人だったんですよね。あの時に毎日絵の事で試行錯誤したっていうのが大きかったですね。

その後は結局オーストラリアに飽きちゃって、平和で平和で...東京の混沌への憧れが甦ってきて、やっぱりそういうのがないと、俺は描けないのかもって。


―安住すると刺激が少なくなりますか?


吉 そうですね、人にもよると思うんですけど、自分の心が平穏な中では何も出てこないんじゃないかという不安はあって、その不安感がなくなった後半の作品が良いって言われることもあるのですが、やっぱり自分としてはあの時のパワーがどうしても必要なんです。


自分としては怒りのない精神状態では作品が描けないという感覚がありますね。


―今の作品なんかはどうですか?その不安感が出ていると思いますか?


吉 コントロールしていると思います。前はできなかったんですけど、今はコントロールしようとしていますね。昔は体を使っていたのが、今は頭を使おうとしているのは、良くないのかなと思うときもあるんですけど。結局自分としては避けられない流れだと思っているので、それをモノにしたいな、という意識では描いています。


オーストラリアで全身全霊でぶつかって描いていた時、ある日ふと、このままいったら死んじゃうな、と恐怖を感じた時があって。

本当にそのぐらいこのままこの勢いで描いていたら、最終的には死ぬなというのがあったのですが、ちょうどその頃にたまたま結婚したっていうのもあって、それで救われたのかなって。そのまま死んでもある意味幸せだったかもしれないですけど。


―吉田さんの絵には何とも言えない夢の世界というか、死後の世界・涅槃の向こうにある情景、ある意味、神経を逆なでするような鳥肌の立つ情景...不安感と神秘さを感じるのですが。


吉 自分としては不安さをあえて与えている意識はないのですが、基本的に絵を描くという行為は自分の為に描いているようなものなので。それをあえて人に見せる時に意識しているのは晴れだけではない、自分の夜の部分を見せたいっていうのは意識していますね。見る人は十人十色なので、なんとも言えないのですが、その暗さの中にあえて晴れを見出して下さる方もいますし、自分のユートピアを画面に定着させたいという気持ち半分、本当にユートピアはあるのかそれを追求していく気持ちで。


―この画の中に自分が入りたいという気持ちで?


吉 あー実際入るとしたら厳しいですね笑


20100503_891620.jpg―今回の展覧会タイトル「CHI」について教えてください。


吉 元々血の色が好きで、どうしても絵の中に入れてしまいたくなる。赤が好きなんです。それから最近子供が生まれたこともあって、血脈というのも感じるようになったのも大きいですね。

海外に行っていた頃は、ありとあらゆる人種がいて、でも血の色だけは同じだった、唯一そこだけが繋がっていた。という思いも含めて、全部織り交ぜて「CHI」というタイトルをつけました。...思いつきなんですけどね 笑 でも自分でもつけた時に、思いが見事まとまったなと。


―作品はかなり大きいですね。


吉 描きやすいというだけなのですが、大きいほうが気合が入るし、絵の中に没頭しやすいんです。小さい作品も望まれるのですが、小さいほうが途中で飽きちゃうんです。


―大きいと制作時間もかかるのでは?


吉 描き方にもよるのですが、今までだと数ヶ月かけていたんですね。気に入らないとすぐに消しちゃったりするので。それを今回は我慢して描いて描いて、やめないで先に行ってみよう。って。一ヵ月くらいで終わらせて次に行こうと。

画材についてもあまり画材を意識しないという自分が大前提ですが、今回アクリルも本格的に使うようになって、石油的でプラスチックなイメージがあって油の生々しさには勝てないなというイメージがあり以前はあまり好きな画材ではなかったのですが、逆にそのプラスチック的な所が面白いかなという意識に変わって。生き物をプラスチック的に描くときにはちょうど良いかもしれないと。

鉛筆も最初は早く作品が仕上がるかなと思って使い始めたのですが、一番時間がかかります 笑 でも鉛筆は描きながら完結していくので、描くのが楽しいですね。


―今回の展覧会について、どのような思いですか?


吉 人間想像しかないと思うんですね。全く違う感覚で一人一人作品を見ると思うのですが見て想像して欲しいですね。そしてあまり構えないで見て欲しいと思います。