ヴァニラ画報

ヴァニラ画廊 展示やイベント、物販情報などを随時発信していきます。

猫将軍展「DUNGEON」作家インタビュー

 

 

独創的でダイナミックな美学で、昆虫、動物、女性、宝石、食物などのモチーフを元に作品を描くイラストレーター猫将軍さん。独自の世界観で国内外から注目を集める猫将軍さんに今回の個展についてお話を伺いました。

 

ヴァニラ画廊(以下、V.)今回関東では初めての個展という事で、タイトルは「DUNGEON(ダンジョン)」と名付けていただいたのですが、このタイトルとコンセプトに決めた経緯はどうしてでしょうか。

 

猫将軍(以下、N.)これは展示する場所にヒントを得たタイトルです。2016年の「虚ろの国のアリス」展で、初めてヴァニラ画廊を訪れた時に、階段を下りた地下にあったので、まさにダンジョンのようでピッタリだと感じました。

 

V.そうでしたか。エレベーターも無い地下で申し訳ないです…涙。

ただ、場所にインスピレーションを受けていただいて派生した作品と考えると、とても嬉しい限りです。

 

 

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V.いつもは創作において、他にどんな形でインスピレーションを受ける事がありますか?

 

N.そうですね。映像からはあまりインスピレーションを受けることが少ないのですが、音楽を聞くとパッと浮かんできたりします。

音楽は洋楽が好きでThe Prodigyというバンドをよく聞いています。

 

 

V.猫将軍さんの作品は1作品ずつストーリー性があるように思うので、ビジュアルではなく、音からというのが面白いです。1作ずつ背景が濃厚に感じられる作品というイメージがあります。

 

 

N.そういったキャラクター性でいうと、まず先にビジュアルが浮かんで、描き込んでいくうちに内面が肉付けされていくというパターンがほとんどです。

 ただ、今回の展示作品である「SLIME(スライム)」は逆に設定から生まれたキャラクターなんです。

身体がスライム状で頭に牙のある骸骨が付いている作品なのですが、最初にスライムが食事する時は、食べる対象を溶かして食べるんだろうけど、それってすごく時間がかかるなと思ったんです。だから、消化しやすいよう先にかみ砕けたらいいんじゃないかという設定からこのキャラクターが生まれました。

 

 

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V.今回は「DUNGEON(ダンジョン)」がテーマという事でクリーチャーや幻獣というモチーフを、猫将軍さんの独自の世界観で描くとこうなるんだなという驚きがありました。

 

N.すごくこだわっている世界観はないんですが、格好つけたいんだけど恰好つけすぎたくないというのがあるかな…。

なので、「ちょっと外す」ということは意識しながら描いています。

「KNIGHT(ナイト)」も甲冑とケーキという普通ならあり得ない組み合わせを一緒にしてある種のバカバカしさを演出することで、格好つけすぎないようにしました。

 

 

V.確かに、甲冑とケーキ…(笑)いや、言葉にすると笑ってしまうんですけれど、でもこの作品を見た時は格好良くて衝撃でした。

猫将軍さんの作品は他にも食べ物がモチーフになっているものが多いですね。

 

 

N.そうですね。私も食べる事が大好きなので、食べ物は“欲の象徴”として描いています

その他にも、“欲の象徴”としては、よく宝石もモチーフに使っています。

 

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V.今回の作品は特に黒が際立っていて、とても特徴的な色合いですね。

作品のカラーリングのこだわりを教えていただければと思います。

 

N.カラーリングについて、モノトーン部分とカラー部分はパキっと分けて、作品全体に色は乗せないようにすることでちょっと不安定な雰囲気を作り出せたらと思っていました。この「MANDRAGORA(マンドラゴラ)」も一見カラフルに見えますが、下のカップ部分は完全にモノトーンにしています。他の作品もそうですが、一種のコラージュのように見せたいという狙いがあるんです。

 

V.確かに実在感がとてもあって、でもどこか不安定でというこの感じは、様々な世界が色々混じりあって生まれているような気がします。

今回の作品は、全て描き下ろしの作品ですが、一番思い入れのある作品はどれでしょうか。

 

N.思い入れはそれぞれありますが、「DRAGON(ドラゴン)」は気に入っています。このダンジョンのラスボスとして描いたので、特に見ていただきたい一枚です。

 

V.この作品のラスボス感は凄いですよね。圧倒的な迫力があって勝てる気がしない…。

 

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V.猫将軍さんはイラストのお仕事を多く手掛けていますが、仕事と個人の創作での心境の違いはありますか。

 

N.仕事はまず期待に応えないといけないというのが常にあります。創作は自分が好きで納得する絵を描けますが、注文されたものと自分の想像したものを描くのはかなり違います。どちらも同じなのは緊張感を持って描かなくてはと思っています。

 

 

V.最後に今後の展望や挑戦したいテーマなど教えてください

 

N.今回の展示自体が新しい試みだった部分はあります。普段は実在の動物や虫を描くことが多かったのでクリーチャーをテーマに展示をするのは初めてなくらいです。

今後も変わらず好きなものを描いていきたいというのが展望です。

 

 

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猫将軍展「DUNGEON」展示WEBページはこちら

'18/2/6 〜 2/18

猫将軍展「DUNGEON」 展示室A

入場料500円(展示室AB共通)

平日12:00~19:00 土日祝12:00~17:00

映画トム・オブ・フィンランド

現在ユーロスペースで開催中のトーキョーノーザンライツフェスティバル 2018にて、フィンランドで制作された「トム・オブ・フィンランド」が上映中です。

非常に思うところがある作品でしたので、自分が忘れない為にも感想を記します。


主人公は1920年フィンランド生まれのTouko Laaksonen、誰もが知るゲイ・エロティック・アートのパイオニアTom of Finlandその人です。
映画は第二次世界大戦中から始まり、テンポよくToukoの暮らすフィンランドの戦後の生活、そしてセクシャリティを弾圧され、それでも描き続けた一人のアーティストの半生をロマンチックに描いています。

 

映画の中で、決してToukoは描くことを止めません。
国から離れ、共有できる仲間を求め、隠し持ってきた絵を盗まれたとしても、何度も何度もスケッチブックを開き鉛筆を走らせます。脳内のイメージをひたすらに描き続ける様は、鉛の柔らかさと紙の質感が相成り、何とも言えない恍惚感に溢れていました。
私たちは、殴られ、拒絶されてなお、あれほどまでに強く価値観を曲げずに(曲げられずに)、粘り強く、自らの思う美しいものを信じた事はあるでしょうか。

美しいと感じる価値基準は、人によって千差万別でありますが、その美意識をぶれることなく自ら信じる事は、救いでもありながら、一方でその事を共有できることが無い限り、実は本当にしんどい事なのだと思います。

でも描かずにはいられない。美しいと信じているものを描かずには生きられない。

 

一方で映画の中では、その作品を受け取る側の姿も描かれます。誰にも話すこともできなかった事を、顔も知らぬどこかの誰かが理解し共鳴してくれる。一枚の絵が心の拠り所になる。この世界のどこかに、自分と同じものを美しいと感じている人がいる。そしてそれを信じて描いている人がいる。

人の価値基準は個人それぞれですが、この通じ合う嬉しさに関しては共有できるものの一つなのではないでしょうか。

布団をかぶって、隠れて大好きな絵を見ているあのシーン、皆様、覚えありますよねえ。ねえ。

その後、Toukoの作品に魅せられた少年は成長し、Toukoの作品を本人の許可を得て発表する機会を作るのです。昔の自分のように、この作品を美しいと感じる世界中の人たちに向けて。


ネタバレになってしまうので、多くは書けませんが、初めての画集を出すシーンで非常に印象的なセリフがあります。全てのものを作る人にとって、これほどまでに心揺さぶる言葉は無いのではないでしょうか。そしてギャラリーでアーティストの展覧会を開催する側にいる自分も、この一言は非常に心にズシンと響くものがありました。

 

Tom of Finlandの作品に描かれる、おなじみの様々なユニフォームや、レザー姿の男性はもちろん、彼の作品に登場するイマジナリーセックスフレンドの官能的な姿など、ビジュアル面でも大変楽しめる作品です。本当はラストシーンでレザーボンデージの男性達と一緒に雄叫びをあげたいくらいでしたが、心の中で静かに拳を突き上げる程度に留めました。涙

ユーロスペースで上映は残り1回。是非多くの方に見ていただきたい映画です。

(ヴァニラ画廊/田口)

 

http://tnlf.jp/
http://www.eurospace.co.jp/

Tom of Finland
監督:ドメ・カルコスキ Dome Karukoski
2017年 / フィンランドスウェーデンデンマーク、ドイツ、アメリカ / フィンランド語(Finnish), ドイツ語(German), 英語(English) / 116分
字幕:日本語・英語【With English subtitles】

 

トム・オブ・フィンランドを日本に紹介して下さり、映画上映後にアフタートークで登壇された田亀源五郎先生も、新刊『ゲイ・カルチャーの未来へ』でトム・オブ・フィンランドファウンデーションとの繋がりについて書かれています。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%81%B8-ele-king-books-%E7%94%B0%E4%BA%80-%E6%BA%90%E4%BA%94%E9%83%8E/dp/4907276869/ref=sr_1_5?s=books&ie=UTF8&qid=1518516963&sr=1-5&refinements=p_27%3A%E7%94%B0%E4%BA%80%E6%BA%90%E4%BA%94%E9%83%8E

 

ヴァニラ画廊の近くのBar十誡でも、Tom of Finlandの画集を取り扱っておりますので、お近くにお越しの際には是非。
https://www.zikkai.com/

 

高橋邑木個展「Humanimal」作家インタビュー

人間(Human)と動物(Animal)が融合した新たな生き物を表す造語、それが高橋邑木さん2回目の個展となるタイトルの「Humanimal(ヒューマニマル)」。人体と生物の境界線が曖昧な新たなる世界を、高橋さんは陶磁器で制作します。

「日常に寄り添うアートを創りたい」と、オブジェから花瓶、アクセサリーと様々な作品の制作に取り組む高橋さんに、今回の個展の制作秘話を伺いました。

 

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ヴァニラ画廊(以下、V.)2016年11月に開催した個展「進化≠変化-人体と生物の融合-」から約1年半経ち、今回も全て新作で2度目の個展になります。

中でも壁一面に並んだ陶器の心臓のシリーズは圧巻ですね。

 

高橋邑木(以下、T.)この心臓のシリーズは、前回の個展からの連作となります。今回は爬虫類との融合をテーマに制作しました。中でもイモリやカメレオンなどと心臓の組み合わせなどがご来場いただいた方にご好評いただいております。

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V.焼き物ならではの独特の質感が、爬虫類の質感、深い色合いが織り交じり、大変印象的です。

高橋さんは、いつ頃から動物と人間が融合するスタイルを発表されているのでしょうか。

T.2016年に初めての個展を開催する際、何をテーマに作品を制作すべきかと考えたときに、図鑑などの資料を眺めながら、自分の焼き物のスタイルを、好きな生き物たちに組み合わせたいと思って制作を始めました。

ただ陶器で正確に模倣するのは、他にも様々な作品がありますので、自分の作品として発表する形としては、幼い頃から好きだった解剖学をモチーフに制作を行おうと思いました。

 

V.今回の個展での新作は、心臓型の容器に花を活けることができる一輪挿しを多数発表されていますが、これらも高橋さんのセンスが光るユニークなアイディアだと思いました。

T.前回までは、これらの心臓をひとつひとつの箱に詰めて「標本」のようなイメージを強く持たせましたが、今回の「Humanimal(ヒューマニマル)」では日常生活に使用できるもの、生活の中に飾ることができるものを作ることに努めました。

今回のような作品は、学生の頃から携わっているアートプロジェクトに影響を受けています。

プロジェクトの目的は「日常にアートを定着させる」ことで、美術館やギャラリーではなく、自宅やレストラン等、日々自分が生活する場所にいかにアートを根付かせるかという事です。

活動では美容室やレストラン等の日常私たちが使用するお店と提携して、それぞれの店舗に4ヶ月に1度のスパンで新しい作品を飾ってもらっています。

この活動を通じて、今回のような生活と直接繋がるような作品が生まれました。

 

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V.確かに、今回の高橋さんの作品は自分の生活の中で、季節の花を活けたり、アクセサリー類は出かける際にお供にする等、パートナーのような愛おしさがあります。

また今回、写真を使ったインスタレーションにも挑戦されていますね。

 

T.写真を使ったインスタレーションもイメージを覆す試みです。作品に触れても濡れても大丈夫なものだよ、とビジュアル面からも伝えたいと思いました。

これらの写真のポージングはモデルさんにお任せしていて、皆さん自由に心臓のオブジェを胸元に持って行ったり、握りしめたりして撮影に参加してくれました。中でも子供が写っている写真は気に入っています。子供が大人と同じオブジェを持つと、全くスケールが異なって別のものに見えたりします。同じものであるのに、違った見え方がすることも作品を楽しむ醍醐味なんだなと感じました。

 

 

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 V.これらの心臓をモチーフにしたシリーズは今後も展開される予定ですか。

T.はい。今後も心臓シリーズは続けていきたいと考えています。

今回は爬虫類との融合を生み出しましたが、別のの動物と組み合わせてみたり、割れている形などを作ってみたり、極端に大きなサイズを作ってみたり、色々と挑戦してみたいと思っています。

 

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 進化し続ける高橋さんの作品は2/18までご覧いただけます。

この機会を是非お見逃しなく!

 

 

 

高橋邑木個展「Humanimal」展示WEBページはこちら

'18/2/6 〜 2/18

高橋邑木個展「Humanimal」 展示室B

入場料500円(展示室AB共通)

平日12:00~19:00 土日祝12:00~17:00

 

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Ciou展「Cosmic Fantasy」

 
現在ヴァニラ画廊では、フランスの作家CIOUの個展を開催中です。
展覧会開催にあたり、来日したCIOUさんに制作のお話を伺いました。

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ヴァニラ画廊(以下V)
今回の展覧会で展示してある作品は、前回初めて来日した際に、色々とインスパイアを受けて制作したものとお聞きしました。
 
CIOU(以下、C)
私は元々、幼少期にフランスのテレビで日本のアニメーションや漫画に多く触れあってきました。
そして、日本のアートに関しても幼いころから両親と共に、伝統的なものからポップカルチャーまで幅広く見て育ちました。
なので、前回来日した際には、子供の頃から慣れ親しんだ風景にすっと入っていくような感じがして、とても不思議な感覚を味わいました。
 
新しい作品を描く事は、様々な影響を色々なものから受けますが、実際に日本という国を見て、私の中で思う部分があり、今回の個展の作品は色々と自分の中で湧き上がってきたものを描きました。
国立博物館で見た太平洋の展示や、ミュージアムで見た妖怪の本、(ものが、年を経て妖怪になるという概念がとても面白いと思いました。)日本の自然にはとてもインスパイアされました。
 
V:CIOUさんの作品は、様々な女性像が描かれています。精霊や女神のように描かれている事が多いですが、女性たちを中心に作品を描く理由はありますか?
C:私は自分がパワフルな女性を描く必要があると思っています。
作品にはストーリーがあり、それには主人公がとても重要です。
ゴッドマザーや魔女、タトゥを施した女の子達や女神、強い女性像ミックスして、描いています。
 
V:確かにとてもストーリー性が強い作品が多いと思います。1枚の作品から、様々なストーリーを想像できますね。
C:テーマはアニミズムやニューカルチャー等、抽象的なテーマを考えているので、観る人のイマジネーションを刺激するような作品が描きたいと思っています。

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V:CIOUさんの作品の特徴といってもいい、とても繊細で細かな線描写や、サイケデリックな色使いはどのような形で生まれるのでしょうか。
C:作品の制作は、まず最初にスケッチを行います。イマジネーションが湧くように、自然と触れあい、美術館を訪れ、そして今まで撮りためた写真などに目を通します。
次に、90年代からのイラスト集を見て、モチーフのリサーチを重ねた上で、別々にスケッチしたものを、コラージュ的に1枚の作品の中に納めます。
(別々の紙に描いたものをコラージュしていくやり方です。)
 
紙の上のドローイングの上から、アクリル絵の具で色を重ねた上で、ここから大きな仕事に取り掛かります。
大鏡と、ロットリングペンで細かく線描を重ねていくのです。

f:id:vanillagallery:20171111132756j:plain(作品一部・色の上から細かな線描で描く。)

V:拡大鏡を使って、あの繊細な線描が生まれるのですね。
C:とても根気強く作業を続ける必要があります。道具といえば、日本に来ると、世界堂に行って、画材を買うのも楽しみの一つです。(笑)
私が日本に影響を受けて、作品を生み出したように、私の作品も色々な人の想像力を刺激して、新たなイメージの展開につながればと思います。

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2017.11.08
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CIOU展「Cosmic Fantasy」
11月7日(火)~11月19日(日)
展示室B
入場料500円(展示室AB共通)
平日12:00~19:00
土日祝12:00~17:00
 
Ciouは、フランス南部のトゥールズに生まれました。
80年代に幼少期を過ごした彼女は日本のアニメや漫画、そしてスター・ウォーズ、ディズニー、SF映画を見て育ち、一日中絵を描いていました。
10代になるとジョイ・ディヴィジョン、パンク、グランジ、ハードコア、後にはブラックサバスといった音楽に浸り、
コミックやイラスト、B級映画にアメリカのポップアートカルチャーが混ぜ合わさったローブローアートに、芸術的・美的共感を覚えるようになりました。
2004年にニューヨークでの個展を開催し、その後、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアをはじめ、世界中で展覧会を開催しています。
Ciouはヨーロッパ、アメリカ、メキシコ、そして日本のグラフィック分野を融合させ、自然・死・異教・美しさを描き出します。作品内にダークな側面とキュートな側面を兼ね備え、奇妙で民話的な趣と、空想的なテーマを取り込み、唯一無二のCiouの世界観に昇華するのです。
彼女の絵の世界は、チャーミングな奇人や、異分子、タトゥを施した女の子たち、躍動的に踊るニンフ、夢幻的な動物や、擬人化した植物がアシッドな色彩で描かれ、まるで奇妙なカーニバルに遭遇するような喜びと驚きがあると評されています。
ヴァニラ画廊での今展示「Cosmic Fantasy」では、2016年に来日し、日本の自然の美しさに触発されたCiouが描いた新作(環境、神話、そして、かぐや姫や親指姫、妖怪たちのおとぎ話にインスパイアされた作品)と、立体作品を展示いたします。
驚くほどに繊細でありながら、プリミティブなダイナミズムに満ちたCiouのダークでキュートな世界をどうぞご高覧下さい。
 

Ciouプロフィール

1981年フランス/トゥールズ出身
2004年ニューヨーク Flux Factory galleryにて初個展。
パリ、バルセロナブリュッセルアムステルダム、シアトル、ローマなど各国で展覧会を開催。
La Poste, Morphik, Nookart, ArtsBd , Sony, L’Aubusson等の企業とのコラボレーション多数。
出版
2009年『Chat siamois』editor by Venusdea
2014年『Ciou collected art』Kochxbos Publishers
2016年『Thumbelina』edited by Scutella

ダニエル・ジョンストン展 「HI,HOW ARE YOU?」

人は何かを忘却する事で、内的世界と折り合いをつけ大人になっていく。

全てを忘れなかったダニエル・ジョンストンは、今も私的な宇宙の中で歌い、遊び、愛し、憎む。

悪も善も、聖も俗も尊卑も無い、透明な場所でただひたすらに。

遠くへ行ってしまったイマジナリーフレンド、愛する人へのオブセッション、霞の向こうに消えた夢のひとかけら。

全てを忘れてしまった私たちは、ダニエル・ジョンストンの作品をどう見るべきなのだろうか。

なかった事にしていた傷跡に、郷愁にも似た儚い疼きが必要ならばと、今回ダニエル・ジョンストン・コレクションを開封した。(H.Nakajima)

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ダニエル・ジョンストン展 「HI,HOW ARE YOU?」
会期:2017年10月9日(月・祝)~10月22日(日)
平日(月~金)12:00~19:00、土・日・祝・最終日:12:00~17:00
会場:ヴァニラ画廊 展示室AB 入場料:1000円

 

この度、ヴァニラ画廊ではアメリカのミュージシャンでありアーティストのダニエル・ジョンストンのコレクション展を開催いたします。
ダニエル・ジョンストンは、無垢な表情をしたカエルのような生き物が印象的なジャケットのアルバム「Hi,How are you?」など1980年代から40枚以上ものアルバムを製作

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し、そのシンプルで美しい楽曲はニルヴァーナカート・コバーンデヴィッド・ボウイなど著名なミュージシャンに影響を与え、音楽シーンにおいて神秘的な存在として世界中で熱狂的に支持されています。
2005年にはその半生が綴られたドキュメンタリー映画悪魔とダニエル・ジョンストン』が公開されるなど、アメリカのアンダーグラウンドの象徴としてその名を馳せてきました。

 


氏は音楽と並行して、主題を同様としたアートワークの制作を続けてきました。
作品内に登場するのは、1つ目の不気味な生物や悪魔、彼の永遠の恋人・ローリー、フランケンシュタインなどのモンスター、性と畏敬の対象としての女性、おばけのキャスパーやキャプテン・アメリカといったアメリカン・アイコンの数々です。
サイケディックな色使いで描かれた奇矯なこれらの生物は、彼の心の中の神話的世界観をダイレクトに投影し、各国でカルト的な人気を得ています。
過去にはアメリカ各州、フランス、ベルギー他欧州諸国にて数々の展覧会を開催してきました。
日本で初となるヴィジュアル・アートのコレクション展となる本展では、カラー原画、モノクロ原画をはじめとした100点以上の作品や、活動初期の一本ずつダビングしたカセットテープなどのコレクションの数々を展示販売いたします。
孤高の鬼才・ダニエル・ジョンストンの魅力に触れることができる貴重な機会です。

 

コレクション協力: H.Nakajima, Daniel Johnston

 

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ダニエル・ジョンストン

1961年 アメリカ合衆国ウェストバージニア州出身。
アーティスト、ソングライター、パフォーマーとしてカルト的な人気を博し、創造性に富んだ作品を数多く発表する。1980年代よりトム・ウェイツソニック・ユースカート・コバーンなどアーティストに支持され、数多くのメディアにも取り上げられた。
作曲数は500を超え、彼の人生を綴ったドキュメンタリー映画悪魔とダニエル・ジョンストン』(2009)によって、音楽のみならず、アートや生き様に関心が再び高まっている。彼のアート作品は、2006年のホイットニー美術館の隔年行事にも出展されている。
2006年にHighwire Musicからリリースされた新しいコンピレーション・アルバム「Welcome To My World」、再リリースされた「Hi How Are You / Continued Story」と「Yip Jump Music」を含め、30枚を超える彼のアルバムの半数以上が今なお流通している。
カート・コバーンが着ていたダニエルの「Hi How Are You」Tシャツは、2006年にヒューストン・クロニクル紙で「世界中で最も需要の高いインディー・アーチストのTシャツ」と評されている。
米国をはじめ、カナダ、ヨーロッパ諸国、日本などでツアーの実績もあり、2003年、2010年と来日を果たし、ライブを行った。

 

 

 

 

 

 

髙木智広展「兎狩り」

 

100号のキャンバスに描かれた「兎狩り」と題された作品。巨大な兎にまたがった女性像は、朝焼けの中で勝利を鼓舞する武者絵のようにも、その白装束から古代の神の姿のようにも見える。
作品のダイナミズムと呼応するように、命のスパイラルの上にある歓喜と哀感に満ちた咆哮が聞こえてくるようだ。

髙木智広は1995年にヨーロッパで古典絵画技法を研究し、一貫して作品テーマの根幹には自然と人との繋がりを据え、数々の個展、グループ展で油彩作品を発表し続けている。
人と動物が混じりあい生まれた半人半獣の神話画のような様式美と奇想的な楽園を思わせる卓越したビジョンを提示してきた気鋭の作家である。

今回2年ぶりとなる弊画廊での個展では、近年の代表作から、最新作までこれまでの活動を総覧できる作品点数を出品いただいている。

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2連作の「雨宿り」1つはしとしとと滴る雨水の向こう側にぼんやりと馬の姿が浮かぶ
そのたてがみの中には暗い面持ちをした女が、何かから身を守るように、じっとこちらを見つめている。対するもう1つは馬の姿は骨のみになり、やはりその向こうから女が怪訝な顔で濡れた空を見ている。
その姿は北欧神話の夜の女神ノートが如く、地を濡らす化身のような存在感と不気味さを彷彿とさせる。

 

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「rabbit hole」「狼少女」「rabbit bandage girl」「輪廻」といった一連の作品では、少女と動物たちがまさに溶けるように混じりあい、互いを身にまとい、カオスが生み出した女神ニュクスのように、暗闇の中から立ち現れるその姿は優雅な官能すら醸し出す。

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そして「夕顔」では今度は白い魂のような人体が呼応しあい、絡み合いながら、新しい生命体へとその姿を変えていく。
朽ちていく肉体、滅びゆく魂と共に、祈りの中に生まれた新たな胎動すらも感じる大作である。(この作品は、2016年弊画廊で開催した「幽霊画廊」に出品いただいた。)

 

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また、近年の代表作の中でも異色作であると言える「烏賊を運ぶ日」。
2015年に描かれたこの作品は、一見ユーモラスでシュールな面が顔を覗かせるが、その実、艶めかしい暗喩、神話的な情景、そしてグロテスクな土着的神秘性に満ち溢れ、暗いノスタルジーの中を彷徨うような、覚めない白昼夢の中に見るものを誘う怖い絵である。

 

 


総じて、自然と人間の関係から、異様で恐ろしくもありながら、同時に豊穣で郷愁的な世界を真摯に、そして克明に描き出してきた作家、高木智広。
今展示はその旧作から新作までを包括的に振り返る事のできる貴重な機会となる。

(ヴァニラ画廊田口)
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髙木智広展「兎狩り」

2017/9/26(火)〜10/7(土)
http://www.vanilla-gallery.com/archives/2017/20170926a.html
ヴァニラ画廊 展示室A
入場料500円(展覧会室AB共通)
営業時間
平日/12:00-19:00 土,日/12:00-17:00(会期中無休)

今展「兎狩り」では、兎を受難の象徴として、様々な視点から描いた絵画作品を展示します。
それを通じて人間の狂気、自然の猛威など、自然と人間の関係を表現します。(髙木智広)

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高木智広はヨーロッパで古典技法を取得した後、野山で動植物と戯れて過ごした幼少時の原体験と、パプアニューギニアでの滞在で巡り合った精霊信仰から見出した「人間と自然の共生」をテーマに据えながら、自身の作品に色濃く反映させてきました。
ヴァニラ画廊にて2年ぶりとなる個展「兎狩り」では、人間が無意識的かつ半ば暴力的に生み出した自然との「境界線」を、豊穣なイメージの網に迷い込んだ兎に託して克明に描き出します。
旧作から新作まで作品を包括的に振り返りながら、人間と自然の在り方を可視化し、その本質に迫る試みにご期待ください。

◆髙木智広 プロフィール◆
西洋の古典技法を用いた絵画作品を中心に自然と人間の関わりをテーマに制作。
近年では日本人の精神の源流となる八百万の神々をモチーフとしている。
国内外で個展グループ展多数開催。

 

 

愛実人形展「LUST」特別インタビュー

愛実人形展「LUST」作家インタビュー

 

現在ヴァニラ画廊では人形作家の愛実さんの個展を開催中です。

愛実さんの人形作品は圧倒的な力強さと存在感と共に、その瞳には、そこはかとない諦念や、咆哮する慟哭が宿っています。

4年ぶりとなる個展では、総数17体の作品を出品中です。

今回の個展について、愛実さんにお話を伺いました

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ヴァニラ画廊 以下、V

愛実さんはいつ頃から、こういった創作人形を作り始めたのでしょうか。

 

愛実 以下、A

作品を制作し始めたのは、きっかけがあり、2004年に東京都現代美術館で開催された「イノセンス球体関節人形展」を見てからです。

ちょうどその時期に、仕事が終わるのが遅い時間で、家に帰った後にテレビをつけると、ちょうど攻殻機動隊のアニメが終わる時間帯でした。

攻殻機動隊は全く知らなかったのですが、その終わりの時間帯に何度も「イノセンス球体関節人形展」のCMをやっていて、吉田良先生や、四谷シモン先生の作品をぼんやり見ていました。

どうやら人形展をやっているらしい…と。

 

それまでは人形といったらリカちゃん人形の知識しかなかったのですが、ちょうど仕事の暇な日、ふとその展覧会の事を思い出して、足を運びました。

それが展覧会の最終日でした。

 

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初めて見た球体関節人形の世界で、何かを表現している人形たちにとても感動して、これが欲しいではなく、私も作りたいと思ってしまいました。

あの時展覧会を見に行かなかったら、多分創作活動もしていないし、こういった人生を歩むこともなかったかと思います。(笑)

 

その時に見た作家さんで、とても強く惹かれたのが吉田良先生でした。

それで吉田先生の教室を探して、教室に通う申し込みをしたのですが、入るまで約半年ほど順番待ちでした。私と同じ思いの人がたくさんいたようです。(笑)

 

 

V そこで初めて人形制作を始めたのですね。

A 本当の意味で一番初めに作ったのは、教室に入る前に半年くらい時間があったので、その間に独学で1体作っていました。

色々と試してみたのですが、鉄人28号のようなロボットのような、人形らしきものが出来上がりました。(笑)

 

V 吉田先生の元で初めて制作した人形は、目が乳白色で蒼黒い肌の人形だとお聞きしたのですが…。

A 当時は先生に一生懸命、目を白くするにはどうすればいいのかと聞いていました。今回展示してある中で、2、3体目くらいに制作した人形作品もそのイメージに近いですね。

 

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V 愛実さんの作品は、ビジュアル面でもほの暗いイメージが強いのですが、本質的な部分でそういった嗜好なのでしょうか。

A いや、あまりよく自分ではわからないのですが、自宅にあったダリやムンクの画集はよく見ていました。

後、海の図鑑の中では深海魚のページが特に好きだったので、具体的にはお伝え出来なのですが、そういった暗いイメージに惹かれる傾向はあったのかもしれません。

 

V 今回のメインの作品も、人の形をしていますが、何か人ではないようなオーラを放っていますね。

A この作品は色々な意味で、境界線上に立っているような作品にしたかったからでしょうか。

製作していくうちに、感情や存在の境界線に佇んでいるような人形のイメージを強く抱くようになりました。

 

V 立体は形として制作するので、特に境界線上の表現は難しいと思うのですが、愛実さんの作品はその境界を壊してくるようなインパクトがあります。

この手足が黒い人形もそういう意味合いが強いですね。

A そうですね。人体が統一されていない事で、ヒトガタと相反するものをこの作品に投影している部分はあります。

V 確かにこういった表現は、愛実さんの生き人形のようなリアルさがあるからこそ映えるものだと思います。

A 勢いだけでは作り切れない部分が多すぎて、表現するにはどうしても技術が必要です。

まだまだ勉強中の身ですが試行錯誤していく先に、作りたいものがなんとか作れるようになってきました。

 

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V 今回の展覧会のタイトル「LUST」ですが、これは愛実さん自身の人形作品を作りたいという欲求の意味なのですね。

A 人形を作りたいという欲求のサイクルがずっと途切れることなくいるのはどういうことなのだろうと自問です。

オブジェから人形から繰り返して制作したいというサイクルをずっと繰り返しているので。

ただずっとそのサイクルの中にいるというのは飽きっぽいからかもしれませんが…。

 

V 全然飽きっぽくないですよ!(笑)

今回は新作が5体、過去作も含めて17体の作品から、愛実さんの創作をより深く感じる事ができるのではと思います。

A 是非楽しんでいただければと思います。

 

 

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(2017.9月27日)

 

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愛実人形展「LUST」

2017年9月26日(火)〜10月7日(土)展示室B 入場料500円

(展覧会室AB共通)平日(月~金)12:00~19:00 土・日・祝・最終日:12:00~17:00

(会期中無休)

http://www.vanilla-gallery.com/archives/2017/20170926b.html

人形を作りたいという強い気持ちが湧き上がってきます。何処から来るのでしょう?この強い欲望は…。


人形作家愛実の2回目の個展を開催いたします。愛実の制作する人形作品は圧倒的な力強さと存在感と共に、その瞳には、そこはかとない諦念や、咆哮する慟哭が宿っています。前回の展示では、等身大の大型作品を始め、痛ましさと切なさを内包する作品を発表し、注目を集めました。4年ぶりとなる個展では、5点の新作を含む作品を展示いたします。今最も注目を集める人形作品をぜひお楽しみください。

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愛実プロフィール

2004年 人形教室ドールスペースピグマリオンへ。吉田良氏に師事。

2013年 個展「release」ヴァニラ画廊

2014年 「ima展」ホルベイン賞受賞

2016年 「幽霊画廊Ⅲ展」ヴァニラ画廊

「幻獣神話展Ⅲ」Bunkamuraギャラリー

「Doll’s Show」六本木ストライプハウス

「人・形展」丸善・丸の内本店

「ima展」東京都美術館

2017年 「Borderless Dolls ヒトガタのなかの7つの世界」FEI ART MUSEUM YOKOHAMA
村崎百郎UMA展」ギャラリーソコソコその他グループ展、企画展多数参加。