受賞発表
大変たくさんの応募作から第1次審査を通過した33作品を、第2次審査で更に厳選なる審査をしました。
独自のクオリティかつユニークな作品が多く、審査は最後まで熱論が繰り広げられ次の各賞が確定しました。


大賞/1名

女学生
波磨茜也香
「女学生」
(162×130㎝・キャンバス・油彩・クレヨン)
南嶌宏賞/1名 都築響一賞/1名
刺青女子高生 皮の下にあるもの
秋山優輔 岩瀬哲夫
「刺青女子高生」 「皮の下にあるもの」
(38.5×29.7㎝・ケント紙・鉛筆) (53×45.5cm・パネルにアクリル絵の具
・モデリングペースト・紙粘土)
宮田徹也賞/1名ヴァニラ賞/1名
S HEROINE
森崎里菜 空野菜摘子
「S」「S」「dress」 「HEROINE」
(立体・セラミック・アクリル絵の具)
(50×15×10cm/50×15×10cm/40×30×15cm)
(130×162㎝・キャンバス・油彩)
奨励賞
血管の引力による物語 未明 タイトルなし
吉野絵理 磯村暖 寳満瑛梨伽
「血管の引力による物語」 「未明」 「リボンの母」
(100×130・綿布・板
・エマルジョン・油彩)
(綿布・油彩・クレヨン)

選評

【南嶌宏】

大賞 波磨茜也香「女学生」

 「女子高生」をめぐるカルチャーは、彼女たちの文化というより、むしろ「女子高生」と限定された時間の中にのみ浮上する「死」の世界を享受する側が創り出した文化というべきだろう。
 今回の大賞作である波磨茜也香さんの〈女学生〉は、その「死」の世界とのコミュニケーションをテーマとする作品として、興味をそそられた。たとえば彼女たちの口元にあてがわれた振幅するシニフィアンとしての「×」。これは彼女たちの中の「死」の世界から乱射される言語の表れとも、その無政府的な拡散を封じようとする猿轡ようにも見える。いずれにせよ、塗り残しの画面を放置するかの素振りを見せながら、「女子高生」のメタフォリカルな性器と見立てるかのような、「口」という交 換行為の器官への注視を促すことによって、画面全体に抜き差しならない性的な緊張感を生み出すことに成功している。すでに世界を持っている作者の作品。「死」の交換を巡る物語をさらにアッケラカンと描き続けてほしい。

南嶌宏賞 秋山優輔「刺青女子高生」

 「鉛筆」、この「鉛の筆」という響きには不穏な硬度としめりが潜んでいる。そしてそこから引き出される毒のイメージ。毒と知りつつ、その毒と引き換えなければ描けない世界の真実の表れ。ひと舐めするたびに舌先からかすかな麻痺がはじまり、全身を鉛色に染めながら、やがて死に至るまでの時間の中に「女子高生」の姿が現れ始める。
 秋山優輔さんの〈女子高生〉は、デュシャンならば「超薄」といっただろう、そこはかとない体液のような鉛色のぬめりを、それ以上の薄さのない表皮のような画面全体に纏わらせることで、世界を息づかせる呼吸のすべてを封印し、やがてそこに隠さ れ続けてきた世界の質感をその表皮に染み出させてみせる。刺青を穿いた女子高生は毒によるかすかな痛みを自らの秘部に湛えながら、振り向くこともなく、富士山をも軽やかなステップで飛び越えていく。もちろん、その行き先は死の世界なのだろう。まさに「毒画」と呼ぶにふさわしい美しい作品。その感性と技術に高い評価を与えたいと思った。

【都築響一】

大賞 波磨茜也香「女学生」

写真では実感として伝わってこないかもしれないが、この作品は1m62センチx1m30センチという大作である。その巨大な画面の、ほとんど真っ白な背景に書き殴られたかのような女子学生たち。意味不明の言葉の泡を吹き出すかのように、塗り込められた口元。初期衝動のみに突き動かされたガールズ・パンクの曲がこだましてくるような。粗暴さがポジティブなエネルギーに転化する、スリリングな瞬間に僕らは立ち会わされているのだ。まだ大学生だという彼女の荒々しい絵ごころが、教師だの学芸員だのに歪められることなく、このまま突っ走って、だれも行ったことのないところまで辿り着いてくれることを、こころから願う。

都築響一賞 岩瀬哲夫「皮の下にあるもの」

パネルの上にモデリングペーストや紙粘土を使って立体感をつけた、おどろおどろしくも目を離せない、負のエネルギーのカタマリのような絵。描いたのが64歳の男性と聞いて、二重に驚いた。荒々しくありながら、画面への怒りの叩きつけ方を熟知しているような、手練の表現。コントロールされた衝動。このひとはいつも、どんな絵を描いているんだろう・・・それがすごく気になる。

【宮田徹也】

大賞 波磨茜也香「女学生」

2013年のヴァニラ画廊の展覧会は、画廊が移転しても変わりなくレヴェルの高いものだった。ヴァニラ画廊は、エログロナンセンスを主体にしていない。「美術」という権威どころか自らの主体すらも破棄する真の現代美術を取り扱うのである。今回の大賞、波磨茜也香《女学生》は巨大な画面の中に女学生が漂い、画面中央と口に靄が掛かっている状態を描いている。背景は無く、白い空間で各々別の方向に向かっている女学生の彷徨に目的を見出せないが、目が死んでおらず、個性が込められている点が重要だ。決してフェティッシュな商品である「女子高生」ではなく、個人の自立に立脚し未来が存在する「女学生」であることにも注目すべきだ。ニューペインティングを想起させたとしても、それは現代に切り込む筆致がそうさせているに過ぎない。充分な画力を持ち、空虚感が満ち溢れる今日の日本の動向に対して目を向け作品として昇華させる力に、これからもエールを送りたい。

宮田徹也賞 森崎里菜「S」「S」「dress」3点

現代美術における立体とは、既成の彫刻を乗り越える使命が課せられている。そのため多くの彫刻者は古美術を研究し、土台と素材に対して格闘を繰り広げている。人体となると問題は更に深刻化する。人間は宗教の力によって偶像崇拝を禁じられる遥か以前から、人の形を制作する欲望に駆られていた。日本の土偶は当然としても、ドイツで発見された女性像は三億年前、南アフリカで発掘された抽象彫刻を人体と見れば七億年まで遡ることが出来る。森崎里菜の作品群は、これら宗教儀礼に用いられた形象像でも仏像でも彫刻でも関節球体人形でもない。では何かと言うと、それら既存のイメージを乗り越える現代美術なのだ。特に二体の《S》は、立脚している。これまでのあらゆる芸術にも見られない独自の立ち姿を携える。これは相当の探究と技量がなければ行えない。また、皮膚が裂けているという独自の見解も注目を引く。内部と外部が互いに異物化する想像力が魅力となる。

【ヴァニラ画廊】

大賞 波磨茜也香「女学生」

ヴァニラ画廊は今年で10周年を迎えました。第1回目の公募展の際には、大変様々な表現が集い、応募下さった皆様のその未知の才能と出会う嬉しさがありました。 第2回目のヴァニラ画廊の公募展を開催するにあたり、昨年の応募作を超えるものがあるのか、若干の不安がありましたが、実際の応募作品を拝見すると、それは全くの杞憂でありました。 エネルギーの渦を日々、作品と格闘するアーティストがこんなにも多い事に、ギャラリストとして喜びを感じます。

大変迫力ある作品揃いで、最後まで審査員の皆様方と議論を重ね、波磨茜也香さんの作品を大賞に選びました。 その荒々しい筆跡の暴力的ですらあるエネルギーと勢い、そしてモチーフの瞳の輝きに、今後の波磨さんの作品を期待します。 昨年応募してくださった方から今年も多数ご応募頂き、着実にその表現の幅を広げている事に、驚きました。画廊として今後精一杯応援して参りたいと思います。

ヴァニラ賞 空野菜摘子「HEROINE」

100号のキャンバスの上に繰り広げられるのは、艶々しい少女と、異形のもの、そして虫たちの戯れ。 空野さんの作品には自身の抱えるトラウマ的なエロティシズムが厚く塗りこめられているような気がします。童話的な既視感のあるモチーフの中に潜む、ただならぬ怖さの質量をねっとりと感じ取ることができます。いつかこの虫たちが脱皮するように、 さらに得体のしれないものが彼女の作品から生まれてくることを期待しています。